「審判の判定」とチャレンジシステム導入の必然

出典:quora.com

懐かしいマッケンローの爆発ぶりで考える審判の判定

さまざまなスポーツで「審判の判定」は問題視されてきた。最近では、サッカーのJ リーグでも大誤審が大きな話題となった。映像で見ると完全にゴールなのだが、ノーゴールと判定され、選手が猛抗議するもゴールが認められなかったのだ。

そうした審判と選手のエピソードに関して、テニスで思い出されるのは、誤審かどうかはともかく、やはりジョン・マッケンローだろう。個人的には大ファンではあるが、いま考えるとひどいものだった。若かりし日のロジャー・フェデラーや毎度お騒がせのセレナ・ウィリアムズの抗議もいただけないが、マッケンローは別格だった。

もはや伝説(?)ともなっているマッケンローの抗議の様子とその爆発ぶりは考えさせられるものがある。

しかしながら、当時から審判の判定については、もう少しどうにかならないものかと思うことしきりだった。

必然の「チャレンジシステム」導入

国際テニス連盟の公式ボールの直径は6.54~6.86センチ。そんな小さなテニスボールが、それこそ男子のサーブなら200キロ以上の速さでコートに叩き込まれる。ストロークでも錦織圭の場合は最速170キロを超えてくることもある。それを人間の目だけで判定するというのは、なかなか無理があると思う。

そんな超速ボールの判定を行う審判だって気の毒だ。判定にとやかく言われるだけでなく、時には感情的になり、激高し、口汚くののしる選手もいる(ああ、マック、あなたって人は…)。仕事とはいえ、主審も線審もかなり嫌な思いをしてきたはずだ。

もちろん、選手側だって、大事な場面で自信をもって打ったショットがアウトと判定されるのはつらい。テニスはたった1ポイントで流れが変わり、勝負が決まってしまうこともあるからだ。そう考えると、「チャレンジシステム」の導入はもはや必然だったと思える。

10台のカメラによる審判補助システム

さて、そのチャレンジシステムについて、おさらいしよう。

「ホークアイ」と呼ばれる補助システムによる審判の判定への異議申し立てを「チャレンジ」という。まあ、結局、マッケンローと同じように「異議を申し立てる」という行為としては一緒なのだが、テクノロジーを使ってやんわり異議を唱えてねというお話だ。

10台ものカメラをテニスコートの周りに設置し、判定結果を選手の申請から2,3秒以内に表示できるようにしている。選手は1セット3回までチャレンジを要求する権利があり、タイブレークではその権利が1回プラスされる。選手の異議のとおりであれば、つまり「誤審」であればチャレンジの権利は保持され、審判の判定どおりであれば、その回数は1回失うことになる。

2006年3月のナスダック100オープン(現マイアミ・オープン)から導入され、グランドスラムでは同年の全米オープンが初お目見えとなった。

テニス中継を見ているとチャレンジ成功というシーンもかなりあるので、いかに誤審が多いかがわかる。いまさらながらマッケンローの気持ちもわからないでもない(後年、マッケンローも自分の時代にチャレンジがあったらよかったと言ったとか…)。

チャレンジシステムの問題点「ポイントかリプレイか」

チャレンジシステム導入後、判定そのものについて審判への直接的な抗議はいくらか減ってきたようにも思えるが、チャレンジ後のポイントがどうなるかで選手が疑問を呈することがある。「ポイントとなるのか、もしくはリプレイとなるのか」。もちろんこの判断まではホークアイがしてくれるわけでもないので、やはり主審のジャッジになる。

たとえば、サーブの場合。

セカンドサーブがコースギリギリのイン判定。サービスエースかと思いきや、レシーバーがチャレンジ。結果がフォルトだった時はわかりやすくレシーバのポイントとなる。この場合は問題ない。

逆に、サーブがフォルト判定で、サーバーがチャレンジ。インだったときは、明らかにサービスエースならサーバーのポイントとなる。

ただ、線審のフォルトのコールでレシーバーがスイングを途中で緩めてそのボールがアウトの場合どうなるか。おそらく、たいていは主審によりエースと判断されてしまうような気がするが、「アウトコールがなければしっかりレシーブできたぜ、オレ」というレシーバーとしては微妙な気持ちになるだろう。

また、仮に主審がリプレイとした場合、今度はサーバーが「エースだろ」とこれまた微妙な気持ちとなる。こうした主審の判断がなかなか難しい。判断の基準がわかりにくい時があり、選手が混乱することが多くみられるのだ。

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全仏などのクレーコートは導入なし

なお、全仏などのクレーコートの大会では、ボールの跡が残るため導入されていない。ただ、下の映像のように本当にミリ単位の微妙さでインだったりする時でも、クレーの場合、アウトの位置に跡が残ってしまうのではないかと思うがどうだろう。サーフェースの違いによるイン、アウトの基準の曖昧さはちょっとに気になるところではある。

チャレンジシステムでもフェデラーは王者だった!?

チャレンジシステムの導入については、当初、精度の問題や「主審への尊厳を欠く行為」として、王者ロジャー・フェデラーなどは反対していたというが、導入後はしっかりと活用している(2016年のATPのデータでは622回というナンバーワンの使いっぷり。その柔軟さも王者の証しかも)。

こうして「審判の判定」問題はテクノロジー(ホークアイ)を使ったチャレンジシステムのおかげでかなり解決されてきているとは思う。選手側も審判側もストレスはだいぶ軽減されたのではないか。

今後はテクノロジーを活用して線審不在で試合を行う大会も増えてくることも考えられるだろう。すでに「Next Gen ATP Finals」ではホークアイを使ったリアルタイム判定が実現してはいる。ただ、なんだか違和感と味気なさは残るのだが…。