タイブレークの最終セット採用はテニスに何をもたらすのか!?

タイブレーク 出典:matt4395/pixabay

2019年ウィンブルドン決勝は最終セットのタイブレークで決着した

2019年のウィンブルドン決勝。BIG3対決。ロジャー・フェデラー対ノバク・ジョコビッチという最高のカード。試合はセットカウント1対1からジョコビッチが第3セットを取り、リード。王手をかける。しかし、観衆を圧倒的に味方につけるフェデラー。第4セットを奪取。セットカウントを2対2とする。

そして、最終セット。途中、フェデラーのチャンピオンシップポイントが2度あり、ジョコビッチがそれを凌ぐという場面もあったが、両者譲らず、12ゲームずつ取り、タイブレークへ突入する。

そう、タイブレークに突入したのだ。最終セットだというのに。この最高のゲームがタイブレークで決着してしまった。タイブレークは7-3、ジョコビッチの勝利。素晴らしい試合だったが、なんとも微妙な気持ちになった。ましてや個人的にはフェデラーのファンなので、悲しさは倍増だった。

この素晴らしいゲームに決着をつけたのが、「最終セットのタイブレーク」だったのである。ウィンブルドンでの最終セットのタイブレーク採用は2019年から(12-12から7ポイント先取)。まあ、ルールだから仕方ないのだが、さらにいえば選手の体力を考えれば仕方がないのかもしれないが、残念ではある。

せめて、決勝のみ去年までと同様、2セットアップというルールであればよかった。そうすれば、ウィンブルドン史上に残るこの名試合が、さらに燦然と輝くものになったように個人的には思えてならない。

グランドスラム決勝の最終セット、タイブレーク採用ってどうなの?

そもそもタイブレークは、2ゲームアップ以上で1セットを獲得できるというルールの中で(例:6-2、6-4、7-5など)、2ゲームの差がつかず、両者が6ゲームを取り合った場合(6-6)、7ポイント先取のゲームを行うことをいう。

最終セットでないなら時間短縮の目的でこのルールには賛成できなくもないのだが、グランドスラム決勝の最終セットでの採用はどうなのか。単純に、味気ないようにも思う。ウィンブルドンだけでなく、全豪オープンでも2019年から最終セットのタイブレークが採用されている(全豪オープンの場合は6-6から10ポイント先取)。

ちなみに、全米オープンは1970年からタイブレーク採用のルールであり、全仏オープンはタイブレークは採用せず、2ゲームアップまで試合は行われている。そのうち、全仏もタイブレーク採用になってしまうのだろうか。

タイブレーク制度についてのノムさんの金言

近年、野球の国際試合や高校野球などでもタイブレークを採用しているが、高校野球でのタイブレーク制度について、あの野村克也氏(以下、ノムさん)がスポーツナビのコラムで素晴らしいことをおっしゃっている。

高校野球の場合、延長13回からいきなり無死1、2塁の状態から攻撃が開始されるのだが、結論からいうとノムさんはこの制度に大反対なのだ。時間短縮も子どもの体力の消耗度も考えて早期決着を目指したルールなのだが、ノムさん曰く、「野球本来の攻撃の形から作り上げてから得点するという醍醐味が失われてしまう気がする」というのだ。

そう、醍醐味なのだ。ましてやプロのテニス。自分のサービスゲームをどうキープするか、相手のサービスゲームをどうブレイクするか。また、ゲームの中での15-15で打っていいショットもあるだろうし、30-30で打ってはいけないショットもあるだろう。40-15だから打てるショットもある。そうしたポイント毎のショットの組み立て、考え方などは、やはり7ポイント先取のタイブレークでは味わえないような気がする。そうしたテニスの醍醐味が失われてしまうのは残念でならないのだ。

グランドスラムの長時間試合ベスト3をチェック!

とはいえ、テニスの試合時間は他のスポーツと比べて信じられないくらいに長い。シングルスの場合は、椅子に座って休む時間があるとはいえ、たった2人で何時間ものあいだ、コートを走り続け、ボールを打ち続ける。グランドスラムの5セットマッチは、肉体的にも精神的にも強いプレッシャーを受けながらのプレーだから、選手にとっては本当に過酷だといえる。

さて、タイブレーク最終セット採用に難癖ばかりつけても仕方ないので、ちょっと大人になって、その過酷さを物語るグランドスラムの長時間試合のベスト3をチェックしてみよう。

第1位 11時間5分 2010年ウィンブルドン 男子シングルス1回戦 ジョン・イズナー VS ニコラ・マユ

ダントツの1位は今後破られることはないのではないかと思われる11時間5分という長時間試合。ATPツアー屈指のビッグサーバーである身長208センチのジョン・イズナーとダブルスのキャリア・グランドスラマーでもある二コラ・マユ(身長190センチ)が3日間かけて行った死闘だ。

なんと5セット目は70-68のスコア。結果はイズナーの勝利。イズナーは勝った瞬間、優勝したかのようにコート上に大の字で寝転んで喜んでみせた。まあ、気持ちはわからないでもない。

第2位 6時間36分 2018年ウィンブルドン 男子シングルス準決勝 ケビン・アンダーソン VS ジョン・イズナー

第2位もイズナー絡みだ。相手のアンダーソンも身長203センチのビッグサーバー。アンダーソンは、以前は錦織圭にコロコロ負けていたが、ここ数年でストローク力もアップし、準々決勝ではなんとロジャー・フェデラーに勝利してこの準決勝に進出した。

この試合に勝ったのはアンダーソンだが、決勝ではジョコビッチにあっさり負けている。というのも、準々決勝のフェデラー戦も最終セットにもつれ込み、13-11。イズナー戦の最終セットは26-24。まあ、決勝のジョコビッチ戦は試合前に力尽きていたといってもいいだろう。

長時間試合にビッグサーバーが多く絡んでいるというのは、やはりサービスゲームのキープ率が高いからかもしれない。特にウィンブルドンのグラスコート(芝)の場合は、ボールが落ちてから低くすべってくるのでレシーブが打ちにくく、サーバーが有利だといわれていてサービスエースとなるケースが多いからだ。ブレークゲームがなければ当然2ゲームアップにはならない。

第3位 6時間33分 2004年全仏オープン 男子シングルス1回戦 ファブリス・サントロ VS アルノー・クレマン

3番目の長時間試合は、全仏オープンでのフランス人同士、ストローカー同士の試合。サントロはフォア・バックとも両手打ちでトリッキーなテニスをするタイプ。大阪なおみがいつもやりにくそうに試合をする台湾のシェイ・スーウェイのような選手で、見ていてじつに面白い。クレマンはバンダナとサングラスがトレードマークのイケメンで、全豪に準優勝した実績のある選手。こちらはわりと普通のストローカーだ。

結果はサントロの勝利で、最終セットは16-14だった。全仏はいまのところ最終セットのタイブレークがないのでぜひ誰かに長時間試合の更新を狙ってもらいたいものだ。こちらは球足の遅いクレーコートということでストローカー同士が本命だろうか。しかし、長いラリーをやって11時間以上の試合はそれこそ過酷ではなく地獄だと思うが。

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タイブレーク勝率のナンバーワンは誰?

余談となるが、タイブレークに強い選手として2019年4月にATPが公式サイトで錦織圭を取り上げている。4月16日の記事だが、過去52週(過去1年間)、タイブレークでの勝率ナンバーワンが錦織圭だというのだ。最終セットの勝率も高く、錦織は粘れば粘るほど強いということなのだが、今後はこの勝負強さをBIG3相手にぜひ発揮してほしい。ベスト3は以下のとおり。BIG3の中ではジョコビッチが4位に入っている。やはりジョコビッチは勝負強い。

  1. 錦織圭            77.8%
  2. ミロス・ラオニッチ      70%
  3. ダニール・ネドベージェフ   68.4%