【新しい悪役?】D・メドベージェフ 強さの秘密とは

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全米オープン2019男子シングルスが終了しました。第2シードのラファエル・ナダルが第5シードのダニール・メドベージェフを7-5、6-3、5-7、4-6、6-4で下し、2年ぶり4度目の優勝を果たしました。

惜しくも準優勝に終わったメドベージェフは世界ランクを1つ上げて4位になりました。ロシアの若き新星はBIG3の時代に終止符を打ってくれるのではないかと期待されています。

しかしコート上での「素行の悪さ」も有名で、全米オープンの前には紙面にて「新しい悪役」と評されてしまうほどです。

彼は本当に「悪童」なのでしょうか?そして強さの秘密とは?

この記事ではいま大注目のダニール・メドベージェフについてまとめました。

メドベージェフ基本情報

フルネームダニール・セルゲーエヴィチ・メドヴェージェフ
生年月日1996年2月11日
出身ロシア・モスクワ
最高世界ランク4位(2019年9月)
身長198センチ
利き手
バックハンド両手打ち
ツアー通算5勝

メドベージェフは「高学歴」で知られています。 モスクワ大学に並ぶエリート育成大学で「ロシアのハーバード」と言われるモスクワ国際関係大学にて経済学と商業学を学んでいました。

19歳でプロになるために大学を中退したメドベージェフですが、そのプレースタイルから優秀な頭脳を感じさせてくれます。今では「ゲームメイクの天才」と称されるほどの選手に成長しました。

メドベージェフは「悪役」なのか?

素行が悪いとして有名になってしまったメドベージェフですが、なぜ彼は「悪役」という烙印を押されるようになってしまったのでしょうか。

この項目ではメドベージェフの素行の悪さについてまとめています。

素行の悪さが評判に

全米オープン5日目、メドベージェフは、世界61位のフェリシアーノ・ロペスを破り、自身初の4回戦進出を決めました。しかしこの試合でもメドベージェフの暴れん坊ぶりが発揮されてしまったのでした。

この試合中、苛立ったメドベージェフはその怒りを無関係なボールパーソンに向けました。プレー終了後にボールパーソンから差し出されたタオルを強引に奪い、返すことなく投げ捨てるという暴挙。その行為に対して主審がコードバイオレーションを取ると、今度は主審に激怒、ラケットを主審の方に向けて大きく放り投げてしまったのです。

以前から危惧されていた素行の悪さが露呈してしまいました。

観客を煽るメドベージェフ

その行為に対して試合中に何度も観客からブーイングをもらうことになってしまいます。しかしメドベージェフの暴走は観客にも向けられました。

勝利が決まった瞬間に観客へブーイングを求めるという、ロックなパフォーマンスをコートで披露します。当然観客も売り言葉に買い言葉、なんとも後味の悪い閉幕となったのでした。

怒りで我を忘れるタイプ

2017年7月のテニスウィンブルドン選手権でも問題行動がありました。男子シングルス2回戦、ルーベン・ベーメルマンスとの試合が行われ、メドベージェフは試合後に審判台に向かって小銭を投げるという暴れ馬を披露。

試合終了後、「あの行為について謝罪したい」と自分の非を認めています。「どんな小銭を投げたのかすら覚えていない」と発言していることから、頭に血が上ると我を忘れて制御できなくなってしまうのではないかと考えられます。

日本でも「すぐ切れる若者」というテーマがかつて茶の間を賑わせたことがありましたが、彼もその特徴に当てはまっているのが何とも言えません。

若さゆえの未熟さもあるか

しかしメドベージェフもまだ23歳。極限状態に孤独で挑まなくてはならない過酷なシングルスの試合で「平静さを保て」というのも無理な話なのかもしれません。

今でこそ「英国紳士」とまで称されるかつてのBIG4の一角、アンディ・マレーも若かりし頃は素行の悪さでイギリスのファンからブーイングをもらっていました。

メドベージェフもこれから実績と経験を積むことで乱暴さも落ち着いてくるかもしれませんね。

メドベージェフのプレースタイル

そんなメドベージェフですが、その圧倒的な強さはテニスファンを感動させてやみません。彼の強さの秘密は一体どこにあるのでしょうか。

この項目ではメドベージェフの強さの秘密とプレースタイルについて紹介しています。

ベースラインからの徹底した守備

メドベージェフの強みはベースラインからの安定した守備です。基本的に無理なショットは打たず、中心に集める打球をメインに組み立てています。

そして相手のミスを誘い、チャンスボールがくれば長身を生かしたネットプレーで一気に決めるというのがメドベージェフのお決まりのパターンです。

普段はフランスで格下の世界ランク200位や300位の選手と練習していると会見で語っていました。「決められそうで決められない、相手をいらだたせるようなプレー」を意識しているとか。

練習相手からすれば勘弁して欲しいような練習です。

抜群のコントロール

ストロークのコントロールにも定評があります。どんなに難しいボールもミスをせず、ほとんどを返球してしまいます。もちろんチャンスボールにはしません。

フラット気味のボールが多い選手としては珍しく、非常にミスが少ない選手として知られています。この対戦相手の戦意を喪失させる「鉄壁の守備」こそがメドベージェフの強さの秘密の1つといっても過言ではありません。

鉄壁の守備と安定感・スピードのあるフラットショットを織り交ぜたゲームメイクは多くのテニスファンを魅了しています。

速すぎるフットワーク

ドロップショットが通用しない選手としても知られています。ベースラインを中心に組み立てる選手の多くはドロップショットで崩されることが多いのですが、抜群のフットワークをもっているメドベージェフは逆にドロップショットを利用して得点元にしています。

身長198センチとは思えない身軽さと神速のフットワークでどんなボールも広いまくり、相手の体力とメンタルを削っていくのが彼の持ち味です。

打球の勢いを殺す、柔らかいタッチ

上述したドロップショットの処理に関して、絶妙なタッチでドロップをネット前に落とし、相手に追いつかせないプレーが目立ちます。

それはボレーにも生かされており、ネットのぎりぎりをふわっと越えていくその様はまるでバドミントンの「ヘアピンショット」のようです。全力ダッシュで追いついてからの柔らかいショットの難易度はとても高く、簡単にできるものではありません。

そういった意味ではメドベージェフは「オールマイティ」な選手へと成長していっているといえるのかもしれません。

「本当は穏やかな性格なんだ」メドベージェフの苦悩

全米オープン決勝終了後の会見で、メドベージェフはこのように述べていました。

「正直、自分が良い人とか優しい人だとは思わない。穏やかな人間であるとは思うよ。なぜテニスをしている時に、自分の中の悪魔が顔を出すのかは分かない」

THE TENNIS DAILY

もしかしたら彼は二重人格なのでしょうか。しかしコートの上で暴れたり、暴言を吐いた後は「なぜこんなことをしてしまったのだろう」と毎回反省しているとのことです。

メドベージェフの中に潜む悪魔と彼は今まさに戦っている最中なのでしょう。彼が世界最強の座に君臨する日が来るとき、それはその悪魔に打ち勝ったときなのかもしれません。