ライジングショットでフェデラーもマッケンローも世界を獲った!?

ロジャー・フェデラー 出典:Pixabay/ahsing888

フェデラーのライジングショットはもはや神の領域!?

ひと昔前に比べ、プロテニス界のストロークスピードは格段に上がっている。さらにストローク間のテンポも驚くほど速い。

とくに男子トッププロの場合、ベースライン上で、まるでアマチュアのボレーボレーのような、いやそれ以上の高速で打ち合う場面をよく目にする。それを可能にしている要因のひとつが「ライジングショット」だ。

下の映像でそのライジングショットを確認できる。映像の超高速ラリーはどれもすごいのだが、特に、「0:48」からのロジャー・フェデラーとノバク・ジョコビッチのラリーは人間業とは思えない凄まじいものだ(まさに、神の領域!?)。フェデラーはジョコビッチのショットに対して、ベースライン上でライジングショットを打ち続け、ポイントを奪取に成功している。

相手の準備の時間を奪うことができるライジングショット

通常のストロークは、ボールがコート内でバウンドして放物線を描き、落下してくるポイントを打点とするのが基本だ。対して、ライジングショットは、ボールがコート内でバウンドし、放物線の最高到達点より前を打点とする。感覚としてはハーフボレーの延長のようなものだ。

難易度が高くなるぶん、どうしてもミスショットのリスクは上がる。だが、相手は予想よりも速く自分のコートにボールが返球されてくるので、次のストロークの準備(打つポジションへの移動や通常のテークバック)が遅れてしまう。相手の準備の時間を奪うことができるショットなのだ。

さらに相手のボールスピードが生かせるので強く速いボールになり、そのままエースになる場合も多い。エースにならなくても、次の決めショットのためのアプローチとなることもあり、戦術的にもその効果は非常に大きいといえる。

ライジングショットといえば、天才ジョン・マッケンロー

テニスの歴史を紐解いたとき、ライジングショットを駆使する選手として思い出されるのは何といってもジョン・マッケンローだろう(ミドルエイジだからでしょうか…)。全英を3度、全米を4度制し、ボールタッチの天才と称されたマッケンローのテニスはまさに芸術的だった。というよりも、「ライジングショットの礎を築いた」といってしまっても過言ではないだろう。

独特のフォームから放たれる切れのあるサーブと繊細なタッチの超絶ボレーを武器としたサーブ&ボレーのイメージが強いが、そのストロークはボレー以上に見るべきところがある。フォアハンドもバックハンドもそのほとんどをライジングで打っていた。マッケンローがラファエル・ナダルのようにベースラインの後ろに下がって打ち合っている姿はあまり記憶にない。

1985年マスターズ決勝の対イワン・レンドル戦でそのストロークを見てみよう。「2:00」あたり、また「3:12」あたりからのストロークラリーを見ると、ほとんどがライジングショットで、またハーフボレー的なショットもあり、それを含めて非常にうまくコントロールしている。

近年、ライジングショット自体を打てる選手は多くなっているようだが、マッケンローのようにそれを駆使してゲームを組み立てることができる選手はなかなかいないのではないだろうか。

伊達公子はライジングショットでランキングを駆け上った!

そして、忘れてならないのが、われらが伊達公子である。シュテフィ・グラフ全盛の時代で女子もパワーテニスへと移行しようとする時期に、伊達は予測能力の高さとフットワーク、ライジングショットを武器に戦った。そして、体格差をものともせず、世界ランキング4位まで駆け上がったのだ。

伊達はコンパクトなテークバックから相手のボールスピードを利用し、体重移動をうまく使ってライジングショットを放つ。ボールに対する面の合わせ方は天性のものがあり、その点ではマッケンローと共通するところがある。

フォアハンド、バックハンドともベースライン付近でのライジングショットが基本で、相手の準備の時間を奪うことが可能だ。さらに、コンパクトなテークバックであるがゆえ、相手にとってはコースが読みにくく、その点でも大きなアドバンテージとなった。

その伊達のライジングショットは、女王グラフとのデビスカップでの大激闘の映像で堪能できる。この試合ではグラフのフォアハンドもほとんどがライジングショットだろう。伊達はその強烈なグラフのフォアハンドに対して、正確な予測とライジングショットで応戦。コーナーに完璧にコントロールされて放たれるそのショットに、グラフが一歩も動けないというシーンを何度も見ることができる。

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ライジングショットの習得のためには?

ライジングショットは習得できれば大きな武器になる。プロの場合は、自分のスイングが完成していて身体的な強さもあるので、タイミングを合わせることである程度打つことが可能だ。それでもミスショットのリスクが大きいので、プロといえどもライジングショットをメインにというのは難しいように思う。

では、アマチュアの場合はどうか。当たり前だがプロ以上にミスショットになる確率が高いショットといえる。それでも、ゲーム中どこかのタイミングで使えると有効打となりうるので習得を目指したい。ポイントは3つ。

  1. いつも以上の相手ボールの見極め
  2. よりコンパクトなテークバック
  3. ハーフボレーの延長のようなイメージでのスイング

相手ボールの見極めは普通のストロークでも当然必要ではあるが、ライジングショットではいつも以上に重要となる。ミスショットになるかならないかは、その見極めによるところが大きい。相手ボールがスピンかスライスか、フラットなボールか。さらにスピン量はどうか。ライジングショットの場合は通常のストロークよりその打点へのボールの到達が速いので、球種やスピン量を正しく判断できないとタイミングが合わずにコントロールができないのだ。

次に、コンパクトなテークバック。通常のストロークと同じような大きなテークバックでもタイミングよく打てるならプロやトップアマの水準といってもいい。そうではないなら、まずは通常のストロークと比べ、よりコンパクトなテークバックで準備をすることが必要となる。

最後に、ハーフボレーの延長のようなイメージでのスイング。コンパクトなテークバックから、ラケット面にボールを上手く合わせて打つのだが、その際大振りせずに、ハーフボレーの延長のような「トントーン」と打つイメージがあるとよいだろう。「トン」でバウンド、「トーン」で打つ感じだ。

まずは、ライジングショットをイメージしながらハーフボレーの練習をして「トントーン」というタイミングをつかみたい。そのあとにストロークラリーを行い、ライジングの打点で打つと、感覚的にかなりラクに打てるはずだ。

フットワークに難があるアマチュアの場合、ライジングショットが打てると相手の深いボールにも後ろに下がらずに対応できるようになるので、守備力の向上という点でもおすすめだ。