テニスを日頃からプレーしている方の目的は多種多様です。運動の一環として、趣味としてプレーしている方が多いと思われますが、中には今より上達したい、大会で活躍したいと思っている「本気のテニス愛好家」もいます。
今回はそんな本気のテニス愛好家さんに向けて、男子プロ選手5名に「スピンサーブ習得のコツ」を聞いてみました。
スピンサーブの打ち方については、みなさん基本的な知識はあると思います。それでも上手く打てない方は、プロならではの回答からヒントを得れば、スピンサーブを上達する道が見えてくるかもしれません。
プロ選手がスピンサーブ習得の際に最も苦労したポイントは?
この質問に、カナダのK選手とイギリスのB選手は、それぞれ「角度をつけること」「正しい方向を見つけること」と答えてくれました。この「角度をつけること」は上級者向けのアドバイスなので、まずは基本的なスピンのかけ方について考えてみましょう。
スピンサーブを打つ際も、当たり前ですがフラットサーブと同じようにラケットを持ち、構えます。ラケットの持ち方は、バックハンドイースタンです。サーブを打つ前、リラックスして構えた時に、ラケットのフェイス面が斜め上を向いているのが理想です。
そしてトスを上げる時は、胸が後ろ(ネットの反対側)を向くように体を開きます。胸が後ろを向くようにトスを上げようとすると、右利きの方ならば左腰が伸びていくでしょう。その動きで、背中が自然と反り、膝も自然と曲がります。
この時に腕も上がってきますね。その後トスが落ちてきたら、伸びた体のバネを生かしながら、腕や体を振り回すことなく、変に肘を曲げ伸ばししようともせずに、自然に腕を天に向けます。
プロの動画などを見ると、スピンサーブを打つ際は構えの段階で肘がよく曲がっているように見えますが、背中が反り、胸が上がり、脚が伸びると自然と肘は曲がるものです。肘の曲がりは、体が連続して動く中で自然と生まれるものなので、意識するものではありません。
インパクトの際は、体の向きがコートに対して横方向になるようにしましょう。インパクトの後も体の向きをキープするように意識します。
腕が下りてくる時は、ラケットがお腹の前を斜めに通過するように体を軽く回すと、自然と「正しい方向へ」スピンサーブが飛んでいきます。回転をかけるためにはインパクトの前に体を回したり、腕を曲げ伸ばししながらサーブを打つ必要があるように思われますが、そうすると腕だけで打つことになり、回転がかかったとしてもスライス回転になりますし、体の負担も大きすぎます。
構えの時からインパクト後まで「体は横向きにする」ことだけを意識し、自然に上げた腕を「肩関節から回すイメージ」で打つことで、負担が少なく、縦回転のかかったサーブになります。
カナダのK選手が言う「角度をつけること」は、サーブそのものに角度をつけることです。縦回転量の多いボールは、急激に落ち、高く弾みます。その「急激に落ちる」という特性を生かし、ネットすれすれのところを通るように打てれば、相手の予想と違うところにボールが落ちるので、リターンの予測が難しくなります。これは身長の高さに関係なくできる角度のつけ方です。
また、サーブに回転をかけるためには、トスの方向も重要になります。スピンサーブを打つためには「トスを左側に上げること」と、ドイツのM選手は答えてくれました。
しかし、左側に上げすぎるとインパクトしにくく、肩関節も自然に回せないので、頭上より少しだけ左になるようにしましょう。インパクトの寸前で、少しだけ左に上げたボールを迎えに行くイメージです。
この二つをマスターしてもまだ上手くサーブに縦回転がかからない場合は、トスを上げた後、ラケットとボールの位置関係をしっかり把握できていないのかもしれません。
オーストラリアのW選手は、ジュニアの頃「インパクトの瞬間をきちんと見ることができていなかったから、綺麗に面に当たっていなかった」と答えています。インパクトの際に体を回したり、腕を妙に曲げていると、落ちてくるボールを綺麗に面に当てにくいですね。
当たり前のことですが、スピンサーブを打つ時もインパクトの瞬間をしっかりと見て、ラケットのどこに当たっていると正しいスピンがかかるのか、あるいはフォルトしてしまうのかを確かめましょう。
とにかく練習あるのみ!
「スピンサーブを習得するために最も行ったことはなんですか?」という質問には、どの選手も共通した回答をしました。とにかく練習すること、です。
ニュージーランド出身のM選手は「ジュニアの頃はスピンサーブを上手く打てなくてイライラした。何時間も練習して、やっと回転をかけられるようになった」と答え、カナダのK選手は「ボールをラケットでどのようにかすめるか、何時間も練習した」と答えています。
オーストラリアのW選手は「念には念を入れて丁寧なトス上げを心がけた」と、スピンサーブを打つために最適なトスの位置を把握する練習も行っていたようです。
どの選手も、練習に練習を重ねてようやく納得できるスピンサーブを打てるようになったと答えているので、スピンサーブは一日にして成らず、の精神で練習を続けることが大切なようです。
直すべき「クセ」と、身につけるべき「クセ」
イギリスのB選手は、スピンサーブを打つために「急がずに、時間をかけるべき」だと答えてくれました。
サーブを打とうとすると、トロフィーポーズの際に自然と背中が反ると思いますが、その背中の反りを起こすタイミングがとても大切になります。気持ちが焦ると、ラケットの持ち方やトス上げの位置が正しくても、体が早く起き上がってしまうためインパクトのタイミングが早くなり、正しい縦回転がかかりません。
とてもシンプルなことですが、B選手の言う「急がない」は、日頃から心がけるべきことだと思います。
逆に、身につけるべき「クセ」として、カナダのK選手は「相手のバックハンド側にスピンサーブを打つ時は、普段のサーブ(フラットサーブ)よりボールの上方にラケットの面が当たるようにしていた」と答えています。
単純にボールの上方を叩くと、ネットに引っかけてしまうでしょう。しかしボールの上方を捕らえるようにラケットを当て、結果的に正しく縦回転がかかると、突然落ちてよく弾むスピンサーブになるのです。
オーストラリアのW選手は「トス自体に上方向の回転をしっかりとかけると、落ちてくるボールにタイミングを合わせられるようになった」とも答えてくれました。サーブに縦回転がかかりにくい時は、この二つのアドバイスを思い出すといいでしょう。
プロが思う「いいスピンサーブ」とは?
この質問も、プロ選手の回答はほぼ同じものになりました。「高く弾むこと」です。スピンサーブを打つなら、バウンドは高いに越したことはありません。
イギリスのB選手は「高く弾むスピンサーブで相手の体勢を崩して、自分が優位に立つことが何よりも大切」と答えてくれました。
オーストラリアのW選手は「いいスピンサーブとは重いサーブであること」と答え、カナダのK選手は「相手が、サーブがバウンドしてすぐに高くジャンプしたら(相手の肩より高く弾むボールを打てたら)それがいいスピンサーブだ」と具体的に答えてくれました。
スピンサーブは「高く弾ませるサーブ」とよく言いますが、目安としては相手の肩の高さまで弾めば、プロ選手から見ても「いいスピンサーブ」になるようです。プロ選手の具体的な回答のおかげで、いいスピンサーブの最終形態がはっきりしましたね。
おわりに
今回は実際にツアーで活躍している男子プロ選手5名に4つの質問をし、それぞれに回答をいただきました。
ニュージーランド出身のM選手は「上手に縦回転をかける感覚がつかめてからは、色々な種類の回転やスピードを織り交ぜて、複雑なサーブを打てるようになった。
沢山練習して、うまくいけば、みんなもいつか同じように回転とスピードの両方を持ち合わせたサーブを打てるようになる」と、テニスを愛する方なら誰にでも「プロっぽいスピンサーブ」を打てるチャンスがあると語っています。
高く弾むスピンサーブは、習得できればあなたの武器になります。もちろん、納得できるスピンサーブを習得するまでには時間がかかることは間違いありません。
しかし、今回協力していただいたプロ選手はジュニア時代にこの練習をしているので、体格や身長などは関係なく、練習次第で打てるようになるのです。プロのアドバイスを基に、スピンサーブを「モノにする」ことで、あなたのテニスライフがさらに充実することを願っています。
とても参考になる記事です。特にプロ選手がスピンサーブ取得に苦労していることなど。