テニスコートの種類。
テニスのコートサーフェスには複数の種類があります。大きな括りで分類すると四大大会でも使用されるハードコート、クレーコート、グラスコート(芝)の3つ。そして屋内テニススクールなどでよく使用されるカーペットコート、そして日本ではおそらく最も数が多い砂入り人工芝のオムニコートです。
コートサーフェスによってボールの弾み方や、足元の滑り具合が異なり、プレイする選手にも得手不得手があったり、ラリーのテンポが変わり、試合展開も全く異なるなどの特徴があります。
プレイ以外の面でもそれぞれのコートには維持管理の面からも様々なメリット・デメリットがあるわけですが、今回は日本で最も一般的なコートであるオムニコートについてまとめてみました。
オムニコートの特徴。
ハードコートやクレーコートと比較すると水はけが良く、コート利用後のケアも表面をブラシ掛けする程度で済みます。コートの維持管理という観点から見ると施設管理者の手間が少ないのが特徴です。
テニスをプレイする観点から見たオムニコートは、ボールの勢いをコートが吸収するような形となります。他のコートに比べボールの弾みは低くなり、球足も遅くなる傾向があります。またコート表面にまかれた砂により、クレーコート同様に足元が滑りやすくなっているため、スライディングステップの技術が必要になります。
技術レベルが拮抗した選手同士の試合になると、ラリーが長く続くことが多くなり、結果的に試合時間が長くなるという難点はありますが、一般の愛好者レベルになると、コート表面が人工芝になっているため、足腰への負担が軽減するというメリットがあります。
日本では馴染みの深いオムニコート。
日本では多くのテニスクラブや公営コートで砂入り人工芝のオムニコートが採用されていますが、これには日本のテニス環境に大きな理由があります。
コートの維持管理だけを考えればハードコートが圧倒的に楽ですが、コート表面が固いため足腰への負担が大きく、少しでも雨が降っているとプレイを中断せざるを得ないため、テニス愛好者の多い日本ではオムニコートに比べ普及率が低くなっています。
クレーコートに関していえば、足腰への負担は軽いのですが、コートの維持管理に非常に大きな手間がかかるため多くの施設では導入を避ける傾向があります。
以上のような理由で降雨日数が平均で年間100日を超える日本では砂入り人工芝であるオムニコートが普及しています。
オムニコート普及の弊害。
日本では一般的なオムニコートですが、海外で採用されている場所はほとんどありません。参考までに下記に2020年開催予定のATPツアー大会と四大大会の合計61大会における使用コートを調べて、その割合を表にまとめてみました。
表からも分かるようにツアーレベルの大会でオムニコートが採用されている大会が一つもないことが分かります。
そして、そこにオムニコートが日本で普及していることのデメリットがあります。オムニコート普及の弊害についてはかつて世界4位だった伊達公子氏が、2019年3月に自身の修士論文『 日本人テニスプレイヤーの世界トップレベルでの活躍を阻むコートサーフェス 』で詳しい考察を発表しています。論文自体は200ページ近くありますが、興味のある方は読んでみてください。
論文の内容を簡単にまとめると、ジュニア時代にオムニコートをメインに練習していると、オムニコートでしか通用しない戦術が知らずのうちに身体に染み付いてしまい、ハードコートやクレーコートで必要な戦術やテクニックをプロになってから新たに習得する必要性があり、海外で戦う上で大きなハンディになるという内容です。
実際に世界を舞台に活躍していた選手が実体験に基づいて述べている意見なだけに大きな説得力がありますし、一般のテニス愛好家でもコートサーフェスの違いがプレイに及ぼす影響は実体験などから分かるはずです。
日本以外でもオムニコートが普及した国としてオーストラリアがあります。しかしながら一時期オムニコートを増やした結果、プロの競争力が低下したため、すぐにオムニコートをハードコートに戻していった過去があるようです。
コートへの理解がテニスの楽しみを増やす。
オムニコートが悪いというわけではありませんが、様々なコートサーフェスの特徴や違いを知ることで、テニスを観る、するという両面で新しい楽しみや気づきを見出すことがきっと出来るはずです。
そしてコートに対する知識が増えることで、日本のコート状況も変化していき、日本のプロテニス選手が今よりももっと活躍していける環境が整備されていけば、よりテニスファンの楽しみも増えるのではないでしょうか。
今回の記事を通してコートサーフェスについていろいろと興味を持った方がいればぜひご自身でコートについていろいろ調べてみてください。テニスコートという面からこれまでとは違った形でテニスの楽しみや面白さを見出せるはずです。
- 投稿者プロフィール
- 阿部亮平
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