2018年シーズンからすでにグランドスラムなど一部の大会でテストされていた「25秒ショットクロック」が、来シーズンからATP管轄の全大会で採用されることが決まりました。
ショットクロックとは、前のポイントが決まった時から次のポイントのサーブ開始までの最大秒数を定め、選手から見えるところ(主にコートの壁など)でカウントダウンを表示する制度です。サーブ間に選手たちはタオルで汗を拭いたり、気持ちを整えたりしますが、その時間が25秒までと明確に決められたということになります。
今回はその「ショットクロック制度」が必要な理由や、そのメリット・デメリットについて解説します。
なぜショットクロックが必要なのか
そもそも、ショットクロック制度が取り入れられる前から、男女ツアーではサーブ間は25秒、グランドスラムでは20秒という基本のルールが存在していました。しかしこれらのルールは「制度」ではなく「マナー」のような解釈で、サーブ間が25秒(あるいは20秒)を過ぎても、必ずしも主審が選手に警告を出すとは限りませんでした。そのため、サーブ間のルーティンの長い選手は、試合を通してサーブ間が平均で35秒にもなるケースがありました。
テニス界は現在、試合時間の短縮化を図っています。グランドスラムでは男子がベスト・オブ・5セットマッチになりますが、今年から全豪・ウィンブルドンが5セット目の終わり方をそれぞれ変更しました。(注:全米は以前より5セット目もタイブレークを行うシステム)
5時間、6時間、過去最長では3日に渡って続いた試合もありましたが、そのような超ロングマッチは選手を必要以上に疲弊させます。いくらタフなプロのアスリートでも、体の負担が続くと怪我に繋がるため、少しでも試合が早く終わるようにとテニス界はあれこれと画策しています。その一環としてショットクロック制度が生まれました。サーブ間の最大秒数を制定して、試合時間が長引くことを防いでいるのです。
ショットクロックのメリット
前述の通り、試合時間が短くなり選手の休息が少しでも増えることが最大のメリットと言えるでしょう。その他、これまではサーブ間のルールは主審に左右されることが多かったため、ショットクロックで25秒ときっちり決められ「見える化」されることで、主審の采配や選手の知名度などに関わらず、タイムオーバーの警告を出せるようになりました。
25秒のショットクロックに慣れることで、ほとんどの選手は20秒以内にファーストサーブを打つようになるでしょう。必然的にリターンの準備をする側も、気持ちの切り替えが上手になり、さらなるプレーの質の向上が期待されます。
ショットクロックのデメリット
最大のデメリットとしては、まず真っ先に「これまで25秒以内にルーティンを収められなかった選手が時間の使い方に苦労をする」ということが思い浮かぶと思います。しかし、この件については選手が上手く対応しています。
私は昨年(2018年)の全米オープン・シリーズで試験的に導入された25秒のショットクロックをトロントで生観戦しましたが、最初は慣れないカウントダウンに焦ってファーストサーブを無理やり打っていたような選手も、次第に25秒の時間の使い方をマスターしていくのが分かりました。
しかし、ダブルスに限っては、25秒という制限時間は時に短すぎるとも感じました。ショットクロックは全てのポイントで適用されるので、ダブルス特有の「ディサイディング・ポイント」の際にサーブ側が十分に話し合い出来ていない場面を数回見たのです。重要なポイントの前にはきっちり確認する癖のある選手は、損をするかもしれません。
もちろんダブルスの選手も今後ショットクロックに完璧に対応していくと思いますが、個人的には、すでにディサイディング・ポイントや3セットマッチ化など各シーンで短縮化が進んでいるダブルスでは、サーブ間があと5秒あってもいいかな? という印象です。
テニスが「疲れる」だけのスポーツにならないために
以前にも記事にしましたが、テニス界はただでさえ過密なスケジュールなので選手たちの疲労は増す一方です。そんな中で導入される試合時間の短縮化は、喜ばしいニュースと言えるでしょう。おそらくこれからも、短縮化のために多くのルール改正が行われると思います。すでに、グランドスラムにおける男子のベスト・オブ・5セットマッチを見直す流れもあるようです。
一方で、せめて男子のグランドスラムはベスト・オブ・5セットマッチであってほしいと望む声も多くあります。そうしたテニスファンの声や、テニス界がこれまで重んじてきた伝統からあまりにもかけ離れた新ルールが誕生しないことを願うばかりです。
このルールとても良いと思います!
ルーティンは分かるのですが、明らかにタイムオーバーしている選手も多いしレシーバーからしたら
間をずらされてやりにくいので…
一般大会などにも普及していって欲しいです。