テニスは技術面のコーチングだけでは駄目だ!


錦織圭選手、大坂なおみ選手の活躍によりテニス人気が沸騰しております。我が子もあの2人のように!と願いをこめてテニスを始めさせる親も多いでしょう。

しかし、テニス選手が怒りを爆破させてラケットを叩きつけてラケットを折る行為が多々あります。観ていて気持ちいいものではありませんし、子供が真似したら困ると思う親も多いはずです。

イライラする原因はエネルギー不足や身体的疲労など様々な要因がありますが、メンタル面での原因について説明します。

テニスコーチは技術面だけでなく、スポーツ心理学を理解してメンタルのコーチングを行い、集中力を保つ方法を教える必要があります。親も子供に対してどのような事に注意すればいいかを伝えていきます。

第1章
パフォーマンス低下の原因

まずラケットを叩き付けてしまう原因である「パフォーマンスの低下のプロセス」について説明します。

①プレッシャーがかかることで不安、プレッシャーを感じる。

②不安、ストレスにより悪い未来の結果を想像して緊張する。

③悪い想像が膨らみすぎることで脳がパンクする。

④脳がパンクしたことで、身体に回す処理能力がなくなる。

このプロセスにより身体が思うように動かなくなり、パフォーマンスは低下します。

④までいくと試合中に正常に戻すのが難しくなってしまう為、④にいくまでに不安、プレッシャー、緊張を処理しなければなりません。処理する手段には「短期的方法」と「長期的な方法」がありますのでいつくか紹介します。

1.コーピングレパートリーの作成

不安、プレッシャー、緊張を感じた時に、どのように対処するかを表にまとめておく方法です。

「深呼吸する」「好きな動画を観る」など、不安などを感じた時にやるべき行動をリストにまとめことで、脳を安心させることが出来る為、リッラクスした状態を保つことができます。

コーピングレパートリーはたくさんあるほどメンタルが強くなります。「自分には対策がたくさんあるから不安に襲われても大丈夫!」と思えるからです。

2.チェックリストの作成

試合までにやるべき行動のリストを作成し、その通り試合までの間を過ごす方法です。

やるべき行動が決まっていると脳が安心でき、リッラクスして過ごせる為、試合に集中して入ることができます。

やるべき事が決まってなく、行動に一貫性がない場合は脳が不安や焦りを感じてしまう為、試合までの時間を緊張した状態で過ごしてしまいます。

引退したイチロー選手は毎日同じ行動をすることを意識していました。毎日同じ質の高いプレーをするために、毎日同じルーティーンを繰り返して試合に臨んでいました。

いつも通りできなくなるのが「緊張」なので、チェックリストを作って、いつも通りの行動を取れるようにしましょう。

3.瞑想

1日5~ 10分の瞑想をすることで不安やストレスに強くなります。理由は不安やストレスを感じると活性化する扁桃体が縮小する為、不安やストレスを減らす事ができます。

瞑想の方法

・椅子又は床に座って、背筋を伸ばして目を閉じる。

・鼻から吸い込み、口からはゆっくり吐き出す。

・瞑想中は呼吸に意識を向ける。


瞑想は続けていくことで効果があります。1日に何回やっても問題ありませんので、1回3分から始めて習慣化して、1日20分を目標にしましょう。

4.ルーティーンに集中

試合中は不安やプレッシャーを感じやすい為、そのことで緊張してしまいます。

「ミスしてしまうかもという未来への不安」「観客に観られていることによるプレッシャー」など様々な原因があります。不安やプレッシャーが大きすぎると脳がパンクしてパフォーマンスが低下してしまう為、それを防ぐために不安やプレッシャー以外のことに意識を向ける必要があります。その方法が「ルーティーンに集中」することです。

・ボールを地面につく

・呼吸に意識を向ける

・ストリングを綺麗に治す


上記のようなことに集中すると、不安やプレッシャーのことを忘れることが出来る為、脳が他のこと考える余裕が出来ます。余裕が出来たら、自分の戦術や相手の疲労状態の把握など「今やるべきこと」に集中力を使いましょう。

失敗などの「未来」のことに集中力を使うのではなく、目の前の「現在」に集中できるようするために、ルーティーンを決めましょう。

 第2章

なにを教えるべきか

ここでは、テニスの技術のコーチング(指導)の方法ではなく、幼いうちにやるべきことやチャレンジ精神、目標達成するための能力を養う方法を伝えていきます。

 1.プレゴールデンエイジ

3歳~8歳は神経系が発達する時期です。平衡感覚、空間認知力、バランス感覚などを養える為、テニス以外のスポーツや、鬼ごっこなど外で遊ばせることで運動神経をよくすることが出来ます。運動の種類、量を増やして、運動の基本を身につけさせましょう。


2.ゴールデンエイジ

9~ 12歳は教えたことをすぐに習得できる時期です。初めての動作でも、手本を見ただけで出来るようになります。この時期はトレーニングで身体を作るのではなく、ボールコントロールを意識した練習をしましょう。この時期に繊細な感覚を身につけることで柔らかいタッチのドロップショットやボレーなどを打てるようになります。


3.明示的学習、暗示的学習

指導方法に「明示的学習」と「暗示的学習」があります。

トップスピンの場合、

「ラケットをボールより下にセットして、下から上に振り上げて打つ」などの基本のやり方を教えるのが明示的学習。

「ラケットを放り投げるようにスイングする」といった感覚で教えるのが暗示的学習。

明示的学習より暗示的学習で学んだ方が試合で上手くできるようになります。頭で考える処理スピードより、感覚や身体で覚えて処理するスピードの方が圧倒的に早いからです。

初めは明示的学習頭で理解して、練習していく過程で暗示的学習をして、自分の感覚や体に覚えさせて、無心で打てるようにしましょう。

プロは試合中にスイングについて考えていません。考えていることは戦術など今やるべきことです。無心で出来ることが増えるほどテニスは上達していきます。


4.モールゴール

目標の設定はモチベーションアップ、やる気を出すために重要になります。しかし目標は大きくといって、非現実的な目標を掲げると上手くいきません。心理学のテクニックで「スモールゴール」というものがあります。小さな成功体験を増やすことで、モチベーションを上げていく方法です。

例えば、今まで運動したことない人がいきなり「毎日10キロ走る!」と目標を掲げても達成することは難しいです。しかし「毎日5分散歩する!」など達成できそうなくらいのレベルに下げることで、達成確率を上げることができます。そして習慣化できたら「毎日5分走る!」に切り替えて、徐々に目標のレベルを上げていきます。毎日成功体験を増やせることで自信を持てるようになります。

テニスの場合でもいきなりオールラウンドプレーヤーにはなれません。「今月はストローク強化して、来月はボレー強化、再来月はストロークとネットプレーを組み合わせる」など、目標を細かく設定しましょう。

5.子供への褒め方

能力や結果を褒めるのは駄目です。能力や結果を褒めると失敗した時に、出来ないのは自分は能力が低いからだと考えてしまいます。褒める内容は「努力、選択、戦術」です。

目標達成のために、どのような戦術で努力をしたのか、なぜその努力を選択したのかなどを褒めることで、子供は自分で考えて工夫した努力をするようになります。そうすることで向上心を常に持ち成長し続けることが出来ます。

しかし、それでも結果も大事です。

失敗した時は、どの努力のやり方が間違っていたのかを分析して、次の努力に繋げましょう。

成功した時は、その時の努力、戦術、選択を冷静に分析して、何が良かったのかを把握することで更なる飛躍に繋がっていきます。

失敗を恐れずチャレンジ精神を持てるように育てることが、コーチと親の役割です。

まとめ

第1章、第2章で紹介したテクニックを使ってメンタルを鍛えることで、集中力は増しプレーの質は格段に上がります。しかし、子供がメンタルの必要性に気づくのには時間がかかります。集中力、正しい目標設定、チャレンジ精神を養える環境を親とコーチが整えてあげましょう。

コメント 1件

テニスは、技術を精神が凌駕する事が多々あります。
ラケットを叩き折りたくなる気持ちはとてもわかりますが、プロ意識をもっと持って欲しいと思います。