プロの試合や全国大会のような大きな大会でもない限りテニスの試合は基本的にセルフジャッジで進められます。今回はどのような状況で選手がレットのコールをかけることができるのか、一般的に想定されるケースをまとめました。
レットとは?
テニスのプレイ中にポイントのやり直し(Replay the point)が認められる状況でかけるコールが「レット(Let)」です。
試合を裁く審判がいる場合は、基本的に主審がレットのコールをかけます。審判がいる試合でも、プレイしている選手は必要に応じて自分の判断でレットをコールすることはルール上認められています。
しかし、選手がレットのコールをかけた場合、その状況が不適切だと審判に判断されるとコールをかけた選手はそのポイントを失ってしまうのでどういう状況でレットが認められるかは理解しておく必要があります。
レットの申告について
セルフジャッジの試合では、レットのコールをかけるかどうかはプレイしている選手の判断に基本的には委ねられています。複数の面で試合が同時進行しており、コート周辺を巡回しながら試合進行を管理するロービングアンパイアがいる場合は、ロービングアンパイアがレットをかける場合もあります。
セルフジャッジの試合では、しばしばレットをかけるタイミングで選手同士が口論になるケースもあるので、レットがどのような状況で認められるのかを理解しておくと、相手とのトラブルを極力避けることができ、自分のプレイに集中することができるはずです。
レットをかけられる状況。
レットのコールがかけられる状況は、ポイントプレイ中に、選手のプレイを妨げるような状況が発生したときです。では具体的にどのような状況でレットがかけられるのか、よく起こる具体例を挙げておきます。
サービスがネットインした場合
最もレットコールがかけられるのはサービスがネットインした場合です。1stサーブがネットインした場合は1stサーブの、2ndサーブの場合は2ndサーブの打ち直しでポイントのやり直しとなります。
レシーバーが返球の構えに入る前に、サーバーがサービスを打ってしまった場合もレットがかけられます。基本的にはレシーバーが構えてからサーブを打つのがマナーになるので、サービスを打つ前はしっかりと相手の構えを確認しましょう。
プレイ中に障害物がコートに入ってきたとき。
プレイ中に隣のコートからボールなど、選手の気を逸らすような障害物が入ってきたときはレットがコールできます。ただ、セルフジャッジの場合はコート内に入ったボールなどの障害物に気づいた選手しかレットをかけられません。
まれに、プレイ中は障害物に気づかなかった選手がポイントを落とし、ポイントが完了したあとにレットによるリプレイを要求する場合があります。プレイ中に障害物に気づかなった選手が後になってレットを要求してもその要求は認められません。
サーバーがポケットに入れているボールを落としたとき。
1stサーブが入ってインプレーになった場合、サーバーはポケットに2ndサーブ用のボールを入れた状態でプレイしているはずです。もしも持っていたボールがインプレー中にコートに落ちてしまった場合はレットがかけられます。
ただし、レットが認められるのは最初にボールを落としたときだけで、2回目以降にボールを落とした場合は全て失点になります。2回目以降にボールを含め、何か物を落とした場合、即失点になるというのは意外と知られていないので、知っておくと有利になることもあるかもしれません。
ちなみにプレイ中にラケットを落とした場合はレットになりません。そのままプレイは続行されます。インプレー中にラケットを落としても、すぐに拾ってプレイを続けられれば問題ありません。
実際に錦織選手がラケットを落としながらポイントを獲得するという珍しいケースが2016年のリオデジャネイロ五輪の試合では発生しています。
レットが認められるその他の特殊な状況。
プレイ中に使用しているボールが途中でパンクするなどした場合もレットをかけることができます。プロの試合では使用するボール数も多く、こまめにボールチェンジがされるので、実際に適応されたケースは聞いたことがありません。
一般レベルでも流石にインプレー中にボールがパンクしてレットになったという話は聞いたことがありませんし、そこまでルールについて熟知している人も少ないので、話題にならないだけかもしれません。
プロの試合で選手がレットをかけた珍しいケース。
2018年のATPファイナルズ準決勝(A.ズべレフ VS R.フェデラー)の試合中に選手自身がラリー中にレットをかけるという珍しいケースが発生しました。
試合はズべレフが1stセットを先取し、2ndセットはタイブレークに突入します。タイブレークの4-3でフェデラーがリードしていたポイントで、ラリー中にズべレフがレットをかけ、プレイを中断させます。
ラリー中にボールパーソンがボールを落としてしまい、その動きに気づいたズべレフがポイントを中断したのです。映像ではその瞬間が記録されており、主審もボールパーソンに確認したうえでポイントのやり直しを認めています。
詳細が分からない一部の観客からはブーイングが起こっていますが、ズべレフがレットをかけたことについては一切問題はなく、フェデラーも試合後にルール上問題はなかったことを認めています。結果的にこのタイブレークをものにしたズべレフはこの試合の勝利を収めています。
もしもタイブレークでレットをかけていなければズべレフはタイブレークを落とし、試合にも負けていた可能性があります。ルールについて理解し、必要に応じてレットを自らかける重要性がこのケースからも分かります。
ルールを理解することでプレイに集中できる!
テニスのルールについて細かく把握している人は意外と少ないです。そのため、試合によく出ている人でも間違ったルールに基づいてレットコールをかけたり、自分に都合の良い解釈で試合を進めようとする人も稀にいます。
相手の主張に押されて不利な条件を押し付けられることがないようにルールを勉強することプラスに働くはずです。今回の記事でルールの重要性について再確認した方は、ルールブックを購入して、レット以外についても確認してみてはいかがでしょうか。いつか試合で役に立つときがあるかもしれませんね。
- 投稿者プロフィール
- 阿部亮平
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