テニスコートのサーフェスにはいろいろな種類があり、コートサーフェスによってボールの弾み方やスピードが変化し、求められるプレイスタイルも変わります。今回はクレーコートに焦点を当て、その特徴と求められるプレイスタイルを解説していきます。
クレーコートとは。
クレーコートとは砕石、レンガなどを砕いた粘土質の土で作られたテニスコートのことです。ヨーロッパや南米ではクレーコートが広く普及しており、テニスツアーではヨーロッパ・南米を中心にしたクレーコートシーズンもあるほどです。
クレーコートと一言で言っても、使用される土によってボールの弾み方やスピードが微妙に変化します。四大大会の全仏オープンで採用されている「レッドクレー」が最も有名ですが、南米では「グリーンクレー」と呼ばれる変性玄武岩を砕いた土で作られたクレーコートもあります。
クレー以外のコートサーフェス。
クレーコート以外のコートサーフェスには「ハードコート」、「オムニコート(砂入り人工芝)」、「カーペットコート」などがあります。クレー以外のコートについては下記の記事で簡単に紹介しているので、ご興味のある方はご覧ください。
クレーコートの特徴。
クレーコートの最大の特徴はバウンド後の球足が遅くなり、ストロークによるラリーが長続きしやすいというところです。クレーコートはバウンドしたボールが高く弾んだり、イレギュラーバウンドが起こったりするため、ベースラインよりかなり後ろに下がってプレイする選手が増える傾向があります。
クレーコートではラリーが長く続くからこそ相手のミスを引き出すため、ドロップショットやネットプレイなど他のサーフェスに比べてさまざまなプレイ・戦術を目にする機会があります。テニスの多彩なプレイを楽しむことができるのもクレーコートの魅力の一つです。
クレーコートのメリット・デメリット
クレーコートにはプレイ面、経営面でそれぞれメリット・デメリットがあります。具体的な例をいくつか挙げていきます。
メリット。
クレーコートは球足が遅くラリーが続きやすいため、ストロークとフットワークの強化につながりやすいという点はクレーコートでプレイする大きなメリットといえます。事実、クレーコートの多いヨーロッパや南米出身のプレイヤーは粘り強いディフェンスと強力なストローク力を身に付けている傾向が高くなります。
プレイ面以外でのクレーコートのメリットは、設置費用が他のテニスコートの6割程度と安く済むところです。初期費用を抑えたいテニスクラブなどではクレーコートが採用されるケースが多いです。
その他にもハードコートに比べて足腰への負担が少なく、球足が遅いことから初心者でもラリーを続けやすい点もクレーコートのメリットとして挙げられます。
デメリット。
クレーコート最大のデメリットはコートメンテナンスに手間がかかるところです。コートに含まれる水分量のコントロールや土の追加、コート表面を平らに保つための整備など快適なプレイ環境を維持するには多大な労力がかかります。
日本は降水量が比較的多く、コート整備に手間がかかるため、コート設置費用が高くてもオムニコートが選ばれる傾向があります。そのため、他国に比べてクレーコートがあまり普及していません。
クレーコートでプレイするデメリットとしてはストロークでエースを奪うことが難しいため、極端に守備的なプレイスタイルが身に付きやすいところです。プレイスタイルの偏りを避けるため、海外のテニスアカデミーは複数のコートサーフェスを用意するような工夫をしています。
求められるプレイスタイル。
クレーコートで求められるプレイはボールを狙ったところに打つプレイスメントと、粘り強くラリーを続ける忍耐力です。
ハードヒットしてもボールの勢いはコートに吸収されるため、なかなか1本でポイントは獲得できません。多少ボールスピードを落としてでも、厳しいコースにボールをコントロールし、相手を揺さぶり甘いボールやミスを引き出すような忍耐力、ボールコントロールが必要になります。
クレーコートを得意とする選手。
プロ選手にはクレーコートでの勝率が他のコートサーフェスに比べ圧倒的に高い選手がいます。
クレーコートを得意とする選手は、強烈なスピンボールと、俊敏なフットワークを生かしたディフェンス力を強みとする選手が多いです。クレーコートを得意とする選手を何名か紹介しておきます。
R.ナダル
過去も含めて歴代最高のクレーコーターがラファエル・ナダルです。全仏オープン10度制覇を含め、クレーコートでの獲得タイトル数は60を超えます。クレーコートでの通算勝率も9割を超えるなど、名実共にクレーキングと呼ばれるにふさわしい実績を残しています。
ナダルの強烈なフォアハンドトップスピンはボールが高く弾むレッドクレーとの相性は抜群です。どんなボールも拾ってしまうと錯覚するほどのフットワークを持つナダル相手にクレーコートでウィナーを奪うのは至難の業です。
D.ティエム
次代のクレーキングの最右翼に挙げられるのがドミニク・ティエムです。2020年シーズン終了時点でクレーコートの通算勝率は.751とハードコートに比べて1割以上高く、通算獲得タイトル15の内、10個がクレーコートとなっています。
フォア・バック共に強烈なトップスピンのかかったティエムのストロークはクレーコートで大きな効果を発揮します。クレーコートでナダルから3勝を挙げていることからもティエムがクレーコートを得意としていることがよく分かります。
錦織圭
錦織圭もクレーコートを得意とする選手の1人です。サーフェス別の勝率はクレーコートが.691と最も高く、バルセロナOP2連覇やモンテカルロとマドリードのマスターズ2大会で準優勝などの実績があります。
ストロークの展開力に優れ、ドロップショットを得意とする錦織のプレイスタイルはクレーコートで存分に生かされます。
クレーコートシーズン。
プロテニスツアーでは毎年、4月から全仏オープンが終わる6月までクレーコート大会が数多く開催される時期があり、クレーコートシーズンと呼ばれます。プロテニス選手にとって世界ランキングを上げるためにはクレーコートでの活躍が必須です。
クレーコートはテニスのレベルアップに欠かせない?
一般プレイヤーにはクレーコートでのプレイを避ける人もいますが、ストローク力を向上させるにはクレーコートでの練習が欠かせません。また、ラリーが続きやすいクレーコートの試合観戦をすることでラリーの組み立てなどテニスの戦術面を学ぶこともできます。
テニスの上達を望むのであればプレイ、観戦を問わずクレーコートに触れる機会を増やしてみてはいかがでしょうか。
- 投稿者プロフィール
- 阿部亮平
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