ATPテニスツアーとATPランキングの仕組み

ATPランキングはどうやって決まるのか。

錦織圭や大坂なおみなどプロテニス選手の試合がメディアで取り上げられると、当たり前のように世界ランキングが紹介されますが、どうやって世界ランキングが決まるのかを詳しく知っている人は意外と少ないかもしれません。

今回はそんな世界ランキング決定の仕組みについてお話していきます。

ATPとWTAとITF。

プロテニスの試合を管理している国際的な組織はATP(男子プロテニス協会)WTA(女子テニス協会)ITF(国際テニス連盟)と3団体があります。

ATP男子プロテニスツアーを、WTA女子プロテニスツアーを統括しています。 つまり世界ランキングというと、男子の場合はATPランキング女子の場合はWTAランキングのことを指すのが一般的です。

そしてITFはATP、WTAランキングを持たない選手が出場する下部ツアーのトーナメントデビスカップフェドカップJrの国際大会などを管理しており、独自にITFランキングを設定しています。プロを目指す選手は、まず下部ツアーに出場して、ITFランキングを上げていく必要があります。

今回の記事では主にATPを題材に説明してきますが、言葉だけではイメージが湧かないと思うので図にすると、テニスツアーは下記のようなピラミッド状の階層になっています。

ATPツアー:大会グレードのイメージ図

ITFの試合で勝ちを積み重ね、ITFランキングを上げることでATPやWTAランキングのポイントを獲得できる大会に出場できるようになります。

世界ランキングを獲得するための道。

ITFの大会に出場するにはITFに選手登録をする必要があります。登録が認められるとITFの大会にエントリーすることが可能になりますが、ランキングを持たない状態では大会主催者の推薦でもない限り、エントリー人数の問題から現実的には出場が難しくなります。

ITFランキングを持たない選手でもエントリー枠に余裕があれば、ITFのJrランキングや日本ランキング(JTAランク)を参考にして出場が認められるので、日本人であればまずは日本ランキングを上げることが国際大会出場への第一歩となります。

ATPランキング獲得までの道のり

ちなみにJTAランキング獲得するためには、日本テニス協会(JTA)に選手登録をして、JTAの公認する大会に出場する必要があります。JTAの試合は1回戦負けでもJTAランキングポイントを獲得できるため、その気になれば誰でもJTAランキングを獲得することが可能です。

一方、ITFの大会になると本戦の初戦を勝たない限りITFポイントを獲得することが出来ません。ITFポイントを獲得できるような選手のレベルはおよそですが、全日本選手権の本戦に出場するような選手といえるはずです。

ATPトーナメントと四大大会。

ATPの管理する大会はATPマスターズ1000ATP500ATP250の3つのATPグレードのトーナメントと、ランキングの低い選手のための下部大会としてATPチャレンジャーツアーがあり、これらの大会に出場して勝ち星を積み重ねることでATPポイントを獲得することが出来ます。

ちなみに、グランドスラム(四大大会)と呼ばれる、全豪全仏全英全米の4大会に関してはITFと開催国のテニス協会が主導して開催しているため、結果はATPポイントに反映されますが、形としてはATP大会には含まれません。

ATPグレードの大会。

開催地、同時期に開催れる大会次第になりますが、およその目安としてはATP250の大会ではATPランク80位以上の選手、ATP500とマスターズではATPランク50位以上の選手がトーナメントのメインドロー(本戦)から出場できます。本戦に入れなかった選手は予選からの出場になります。

ATP250の大会に本戦から参加できない選手は、予選にエントリーして本戦入りを目指すか、下部ツアーであるチャレンジャー大会に出場を重ねATPポイントを積み重ねる必要があります。

チャレンジャーツアーの大会。

大会によっては上位シードにATPレベルの選手が出ることがありますが、多くの選手はグランドスラムの本戦に直接出れないようなランキングで、大会の優勝賞金も少なく、他の競技で例えるとプロ野球の2軍戦のようなカテゴリーになります。

ATPツアーの大会に比べて観客と選手との距離が近いため、大会によっては選手にかなり近い目線で観戦できるため、プロの凄さを肌で実感することが出来るかもしれません。

四大大会(グランドスラム)。

全豪、全仏、全英、全米の年間4大会しか開催されない世界最高峰のテニス大会です。大会のメインドロー数は128で、予選通過枠や主催者WCなどを除くと、ATPランク100位前後のランキングが本戦出場のカットラインになります。

その他のATPトーナメント

その他のトーナメントして、年間ATP獲得ポイント上位8選手が出場できるATPファイナルズと、若手(21歳以下)のATPポイント獲得上位者が出場できるNext Gen ATPファイナルズという2つのトーナメントが年間の最後に開催されています。

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テニス選手の収入。

テニスの場合、基本的には大会の賞金が収入になります。プロとして活動している選手はどのくらいの収入があるのか気になる方も多いますが、基本的には収入と世界ランキングは比例します。

ATPランキングで見る年間獲得賞金額

上記の写真からも分かるように、ランキングが上がれば上がるほど獲得賞金は劇的に上昇します。図では分かりにくいですが、250位の選手で約45,000ドル100位約175,000ドルとなります。ちなみに2019年の1位だったR.ナダル選手は賞金だけで1600万ドル以上を獲得しています。

ツアーを転戦する選手の遠征費や宿泊費、コーチ代などは選手の自己負担となるため、賞金だけで生計を立てられるのはグランドスラムの本戦に継続的に出場するようなトップ選手だけに限られます。その他の選手は企業との契約によって得るスポンサー料などの様々な支援がなければ活動ができないというのが現実です。

しかし、勝ちを積み重ねてランキングを上げることができればその見返りとして収入も当然大きくなります。2019年のATPランキングでは39位より上位で終えた選手は賞金だけで1億円を超えています。そして、選手によってはそこに様々なスポンサー収入が加わり、数十億単位の収入を1年で得る場合もあります。

正に実力至上主義の世界。

コートに入れば勝ちか負けしかないテニスは正に究極の個人競技と言えます。プロの世界では収入も成績が直接反映されるような形で、勝てば勝つほど賞金が増え、ランキングが上がることによってスポンサー契約などによって、より大きな収入を得ることも可能になります。

実力至上主義の厳しい世界ではありますが、ATPツアーや世界ランキングの仕組みを知ることによって、今までは違った形でATPツアーを楽しむことが出来るはずです。

単純な試合結果だけはなく、ATPツアーという側面からより一層テニス観戦を楽しめるようになるきっかけにこの記事がなれば幸いです。