セカンドサーブこそが、プロでもアマでも勝負のカギとなる!

セカンドサーブ 出典:Pixabay / David Mark

最高のサーブを「打ち続けること」は不可能

テニスは相手の「時間」をどれだけ奪えるかを争うゲームだといわれる。相手が自分のボールを打ち返すための時間を奪う。打ち返す時に必要な準備をさせないのだ。そのための戦略のひとつとして、「サーブをどのように打つか」ということがある。

サーブはストロークやボレーのように相手から直接的に影響を受けない唯一のショットだ。邪魔が入らず、時間を奪われることもない。サッカーでいってしまえば、ゴール前、ノーマークでシュートできるようなものだ。もっといえば、PKのようなものか。だからこそ、サーブでポイントを取る、もしくは有利にゲームを進めるためのものと考えたい。それに、ファーストサーブ、セカンドサーブと2本も打てる。

それならサーブはスピードがあるほうが時間が奪えるから有利なのか。特にファーストサービス。男子プロなら200キロを超すスピードが勝つためには絶対に必要なのかというと、そうでもない。いわゆる200キロをはるかに超えるサーブを打ち込めるビッグサーバーがチャンピオンにはなれないからだ。なぜか。

もちろん、スピードは武器にはなるし、速いほうが有利ではあるが、勝利への絶対条件ではない。最高のコースに、最高のスピードで打ち続けることは、サーブからゲームを組み立てる、あの王者ロジャー・フェデラーでさえできないのである。もし、ビッグサーブを打ち続けて、サーブからのポイントを1ポイントも落とさなければ、試合には絶対に勝つことができる。だが、そんなサーブを何試合も「打ち続けること」は不可能だといえる。

BIG3が勝てる要因はセカンドサーブ!?

現在、グランドスラムの勝利を独占しているBIG3(ノバク・ジョコビッチ、ラファエル・ナダル、ロジャー・フェデラー)は230キロを連続して打ち込むような、いわゆるビッグサーバーではない。もちろん、3人ともエースが取れるファーストサービスを打つことができる。ただし、それはスピードゆえではない。

彼らには、コースや球種、回転量を調整し、相手の予測を外す戦略がある。それゆえ、ビッグサーバーよりも、他の選手よりも、サーブというショットで優位に立てる。ただし、彼らが勝てるのはそうしたファーストサービスをもっているからだけではない(当たり前ですが…)。

2019年ウィンブルドン準決勝を見ていて気付いたことがある。ラファエル・ナダルのセカンドサーブが格段に良くなっていたのだ。速くなり、深くなり、セカンドサーブでも数多くのポイントを取っていた。ナダル曰く、「年齢を重ねて走れなくなってきたので、サーブを強化している」そうだが、その努力のたまものなのだろうか(ただ、この試合には負けてしまったが…)。

ATPツアーに面白いデータがある。2018年ツアーにおいて、ファーストサーブでのポイント取得率ベスト5は誰か。

1.ミロス・ラオニッチ  83%

2.サム・クエリー    81.6%

3.ジョン・イスナ―   80.9%

4.ロジャー・フェデラー 80.2%

5.ケビン・アンダーソン 79.4%

いわゆるビッグサーバーが並んでいるが、フェデラー以外、グランドスラムに勝った選手はいない。フェデラーについては、スピードだけではなく、コース、球種、回転量、さらに相手の予測を外す戦略など、前述のサーブ技術ゆえの4位かと思える。

そして、セカンドサーブでのポイント取得率。

1.ラファエル・ナダル  59.6%

2.ロジャー・フェデラー 58.6%

3.ミロス・ラオニッチ  56.8%

4.ジョン・イスナ―   56.8%

5.ノバク・ジョコビッチ 56.6%

見事にBIG3が入っている。もちろん、セカンドサーブ自体がポイント獲得率の要因ではないだろうが、勝てる選手はセカンドサーブのポイント獲得率は高いのだ。

たしかに、最近のプロの試合を見ていると、セカンドサーブの強化は全選手に必要なことだと思えてならない。

錦織圭があまいセカンドサーブを打ってしまい、天敵ジョコビッチにレシーブエースを決められてうなだれている姿をよく見る。逆に、錦織圭もあまいセカンドサーブには容赦ない。さらに、女子選手の「普通」のセカンドサーブは、セレナ・ウィリアムズや大阪なおみの凄まじいレシーブの餌食となる。

レシーブ技術が飛躍的に向上しているといわれるいま、セカンドサーブでのゲームの組み立てが試合の勝敗に大きく関わってくるといっても過言ではないだろう。

勝つためのセカンドサーブの練習とは?

さあ、そして私たちアマチュアの場合。サーブは中級ぐらいの人(自称中級)でも不安定な人が多い。ダブルフォールトが多く、ファーストサーブとセカンドサーブのスピードがあまりにも差があったりする。アマチュアのセカンドサーブは、プロ以上にチャンスボールになっているのだ(ただ、チャンスボールを確実に打ち込むのは意外に難しかったりしますね…)。

それでは、どんなサーブを練習するべきか。プロの場合はともかく、アマチュアのセカンドサーブに速いサーブはひとまずいらないと思う。それに速いだけのサーブは慣れてくると速いリターンを打たれてしまいうこともある(速いボールにやけに強い人がいます、経験的に)。

大事なのは、コース、球種、回転量をきちんと調整できるセカンドサーブの練習をすることだと思う。相手の予測を裏切ることができる戦略をもったセカンドサーブを習得することだ。そうした技術を身につけることが試合に勝つためには必要だといえる。そんなセカンドサービスが打てれば、ダブルフォールトもなくなるだろうし、技術的には、速いファーストサーブを打つことなんて造作もないことだ。

試合をしていて本当に厄介なのは、スピードでただガンガン打ってくるタイプじゃない。ファーストサービスでもセカンドサービスでも、ワイドやストレートとコースを打ち分け、スライス、スピンを打ち分け、回転量を変化させてネットの高い位置を通過させてサービスラインぎりぎりの深い位置に打ってくることができる、そんなサーバーなのだ(フェデラーのように)。

そんなフェデラーのサーブ練習をご紹介。当たり前ではあるがフェデラーのように変幻自在に打てなくても、まずは意図をもってサーブ練習に取り組むことが上達の第一歩なのだろう。