ウィンブルドンが「ココ」に熱狂!
ニュー・スター誕生である。コリ・ガウフ。「ココ」という愛称で呼ばれるアメリカの15歳に2019年ウィンブルドンが熱狂した。
プレーはもちろん、その「ふるまい」「たたずまい」が素晴らしい。スター性のある容姿も見逃せない選手だ。
15歳でのベスト16進出はカプリアティ以来28年ぶり
世界ランキング313位のガウフは、1968年のオープン化以降、ウィンブルドンで最年少となる15歳122日で予選を突破した。
そして、本線1回戦ではウィンブルドンを5度制しているビーナス・ウイリアムズにストレートで勝利。2回戦は2017年ウィンブルドンで準決勝に進出したマグダレナ・リバリコバにストレート勝ちを収めた。
センターコートで行われた3回戦ではスロベニアのポロナ・ヘルツォグに2度のマッチポイントを握られながらフルセットの末、逆転勝ち。15歳でのウィンブルドンのベスト16(4回戦)進出はじつに28年ぶり。なんとも懐かしい1991年のジェニファー・カプリアティ以来の快挙となった。
4回戦こそ元世界ナンバーワンで第7シードのシモナ・ハレプにストレートで敗れたが、全世界に強烈なインパクトを与えた。次世代のナンバーワン候補登場を印象付ける活躍だった。
女子テニス界待望の実力、スター性をあわせもつガウフ
2019年ウィンブルドンの女子は、われらが第2シードの大阪なおみが1回戦で惨敗、2019年全仏オープンを初制覇し、前哨戦でも優勝して絶好調と思われた第1シードのアシュリー・バーティや第3シードのカロリナ・プリスコバもベスト16で姿を消してしまった。男子のBIG3(ジョコビッチ、ナダル、フェデラー)のような絶対的な強さとスター性をあわせもつ選手が不在の状況だ。
スター性といえば、大阪なおみは実力、スター性両方を兼ね備えた選手として筆頭だったのだが、全豪オープン後(というより、コーチのサーシャ解任後)は、世界から注目されるナンバーワンの重圧もあり、以前の未熟さを露呈し、歯車がかみ合わないまま、ここまで来てしまっている(本当に全米オープンが心配…)。
そんな状況での15歳コリ・ガウフの登場は、ウィンブルドンの観衆だけでなく世界が熱狂するのも無理はないだろう。
アスリートの両親から受け継いだ高い身体能力
ガウフはアメリカのジョージア州アトランタで2004年に生まれた。2004年はマリア・シャラポアが17歳の最年少でウィンブルドンを制した年でもある。大学の元アスリートである両親のもと、7歳の時にテニスを始めた。
父親のコーリーさんはバスケットボール選手、母親のキャンディさんは陸上選手として活躍した経歴をもっているというから、彼女の高い身体能力は2人から受け継いだものだとわかる。その両親の陣営ボックス席からの姿がじつに印象的だった。
コーリーさんは目をそらさずに娘のプレーをじっと見ていた。もちろん、大事なポイントを取れば立ち上がって拍手をしていたが、その落ち着いた雰囲気とどのような結果になろうと娘を信じているというようなまなざしには非常に好感がもてた。
キャンディさんは見ていられないというように下を向いてしまう仕草もあり、娘を心配する様子が見られたが、ヘルツォグ戦勝利の瞬間に見せた歓喜のダンスは元アスリートの切れ味だった(陣営ボックス席ではなかなか見られないリアクションでしたね)。
また、ハレプ戦で負けた後の退場時に、意気消沈するガウフにハレプと一緒に退場するよう手でうながす仕草を見せたコーリーさん。負けた時は少しでもその場から去りたいという選手の気持ちはわかるが、15歳の娘にウィンブルドンの伝統を守らせようとするコーリーさんの姿は素晴らしいと思った(なおみちゃんは負けた後、相手選手を待たずにさっさと帰っちゃったのは残念でした)。
セレナ・ウイリアムズのコーチがサポートに
最初のコーチは父親のコーリーさんだったが、10歳からはセレナ・ウイリアムズのコーチを務めているパトリック・ムラトグルーが運営するフランスの「ムラトグルー・テニスアカデミー」でトレーニングしているようだ。
ムラトグルーといえば、昨年、大阪なおみが優勝した全米オープンで、セレナへの試合中のコーチング疑惑で日本でもすっかり有名だが、世界の超一流コーチであることは間違いなく、今回のウィンブルドンでもガウフ陣営で応援をしていた。
ムラトグルーのように、技術面はもちろん、勝者のメンタリティーを熟知している人間が近くにいることはガウフにとっても非常にプラスになるだろう(ちなみに、ガウフの現コーチは、ジャン=クリストフ・ファウレル)。
13歳で全米ジュニア準優勝、14歳で全仏ジュニアに優勝!
ガウフはすべてのショットがすでに高いレベルにある。まだまだ粗削りではあるが、サーブもストロークも思い切りがよく力強い。今後、身体を鍛えることでさらに切れ味の鋭いボールを打てるようになるのではないか。加えて、フォア、バックともスライスをうまく操ることができる柔軟さもある。ネットプレイのタイミングもよくボレーもうまい。
さらにフットワークが素晴らしく(改善の余地はあるが)、我慢強さもある。このフットワークのよさや我慢強さは全サーフェースで勝てる可能性を示唆している。ウィンブルドンでも全米でも、そして全仏でもだ。
事実2年前、13歳最年少で全米オープンのジュニアに準優勝し、昨年は14歳で全仏オープンのジュニアのタイトルを手中にしている。そして今回のウィンブルドンでの活躍だ。特定のサーフェースを苦手にしていないことを証明している。
なによりもガウフはそのメンタル面が素晴らしい。ミスをした時にネガティブな表情をほとんど見せず、メンタルコントロールできているのは大きな資質といえる。
15歳とは思えないゲームマネジメント力は集中力と落ち着きからくるものだろう。インタビューの対応やコメントなども大人びたものがあり、驚かされる。このメンタル面の強さは真のチャンピオンになるための絶対的な武器となるのではと思える。
ちなみに、憧れのビーナス・ウイリアムズに似ていると言われることについて、「確かによく言われるけど、コートに入ったら自分は自分よ」と言ったという。15歳で確固たる自分をもっているということも彼女の素晴らしい資質といえるだろう。
「限界のない才能」はいつナンバーワンに?
いずれにしても、ビーナスが対戦後のインタビューで称したとおり、「コリ・ガウフの才能は限界がない」のは間違いない。あのマッケンローも「ガウフは身体的だけでなく精神的にも成熟している。もし彼女が20歳までにナンバーワンになっていなければ絶対に驚くだろう」と言っている。
かつてのナンバーワンたちのこうした証言からもガウフが次世代のナンバーワン候補であることに疑う余地はない。おそらく全米オープンでもワイルドカードで出場してくると思うが、さらなる飛躍を期待したい。
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- 東龍太郎
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