団体競技である野球やサッカーに比べて、個人競技のテニスはプロになる方法がいまいちよく分からないという方が多いはずです。今回はテニスのプロ選手になる方法と、プロ選手の待遇など金銭的な事情についても調べてまとめてみました。
プロテニス選手とは。
海外での明確な定義は分かりませんが、日本では日本テニス協会の定めるeラーニングを受講し、プロフェッショナル登録申請を提出し、受理されるとプロテニス選手として認められます。
基本的にはプロテニス選手を名乗りたい人が申請をして協会に認められればプロになれます。プロ登録を希望しなくても下記の条件に当てはまる場合はプロ申請が必要になります。
プロフェッショナル登録を必要とする条件を確認していくと、テニスの競技活動を通して一定の収入を得ている人がプロと定義できるかもしれません。
テニスのプロには種類がある。
日本テニス協会ではプロを2種類に分けています。
トーナメント・プロフェッショナル
JTAランキングでシングルス100位以上。もしくはダブルス50位以上に該当する選手はトーナメント・プロフェッショナルとして登録申請をすることができます。
上記のランキングを達成できるような選手であれば、JTAで1番賞金総額の低い大会で優勝するようなレベルになるため、テニスで一定の金額を稼げるはずです。ちなみに賞金総額20万円の大会でシングルス優勝すると8万円。準優勝で4万円。ベスト4で2万円の賞金が得られます。
レジスタード・プロフェッショナル
トーナメント・プロフェッショナルの条件を満たしていない人でプロ登録を希望する人は全て、レジスタード・プロフェッショナルの登録となります。テニス協会のHPを見る限りではトーナメント・プロフェッショナルと大きな違いはないようです。
レジスタード登録している選手はコーチとしても活動している場合が多い印象があります。競技思考が強い選手はトーナメント・プロフェッショナルのランキング条件を満たしてからプロ申請するのが一般的です。
プロテニス選手の現状。
プロ登録した選手は登録料として10,000円/年をテニス協会に支払う必要があります。更に選手は大会に出るたびにエントリー費の支払いが必要です。国内大会であれば、1大会当たり約1万円のエントリー費がかかります。
更に大会を勝ち進めば、宿泊費や交通費などがかかるため、大きな大会にでも優勝しない限り、国内大会で大きな収入を得るのは非常に難しいのが現状です。大会に出ても毎回優勝できるわけではないため、出費以上に賞金を稼いでいる選手は想像以上に少ないはずです。
プロはどうやって収益を得るのか?
プロ選手として競技活動に専念できるのは一握りです。もしも選手としての活動に専念するのであれば実業団にプロ選手として所属するか、企業や個人などから活動資金をスポンサーしてもらう必要があります。
ただ、企業が選手をスポンサーする場合は、四大大会に出るようなレベルの選手でない企業が選手個人をスポンサーするメリットは少ないので、個人で十分な金額を支援してくれる企業を見つけるのは非常に難しいのが現実です。
JTAの試合に私自身が出ていて、周りの選手の話を聞く限りはテニス好きの経営者などから個人的に遠征費などを支援してもらい、なんとか活動している選手がほとんどです。
賞金だけで生活できるプロテニス選手は?
プロテニス選手は四大大会に出場するためのランキングポイントが必要になります。大会は世界各地で開催されるため、ランキングを上げるためには多額の遠征費が必要になります。
世界トップを目指す選手は、専属のコーチやトレーナーを雇い、大会に帯同させるため、コーチやトレーナーの費用も個人で負担する必要があります。金銭的に厳しい選手は年間数大会だけ帯同してもらう契約を結ぶ場合もあります。
選手活動には大きな出費が伴うので、四大大会の予選に出場できる目安となるランキング100~300位程度の選手でやっと収支がトントンになるといわれています。
2019年の年間ランキングが199位だったロブレド選手を調べると、年間の獲得賞金は約8万ドル(約850万円)でした。遠征費など考えるとおそらく手元に残る金額はほとんどないはずです。
四大大会本戦に直接出場できる100位前後の選手になると、獲得賞金は跳ね上がり、30万ドル(3200万円)前後を年間で稼ぐようになります。100位前後になるとやっとテニスだけで十分生計が立てられるようになります。
100位前後になると、日本人であれば国別代表に入るようなレベルです。日本人プロテニス選手で賞金だけでまともな稼ぎを得ているのは5人ほどしかいないと考えられます。
テニス界の頂点は圧倒的なスポンサー料を得る!
プロテニス選手は世界トップレベルになると賞金以上に多額のスポンサー料を得るようになります。毎年発表されるForbsのアスリート長者番付の最新ランキングではR.フェデラーがテニス選手として初の1位となりました。
フェデラーは賞金で630万ドル(約6億8千万円)、スポンサー料で1億ドル(約108億円)もの金額を稼いでいます。世界中をマーケットにするテニスはグローバル企業が選手のスポンサーにつくため、莫大なスポンサー料を稼げる可能性があります。
日本人では大坂なおみが29位(女性アスリートでは1位)、錦織圭が40位にランクされています。大坂も錦織もスポンサー料だけで年3000万ドル(約32億円)を超える収入を得ています。
日本人トップで、世界ランキングでもTOP10に入る実力があれば、日系の大企業がスポンサーにつくので稼ぎは莫大になります。ただ、有力なスポンサーがつくかどうかは選手の国籍やキャラクターなどの個人的な要因に大きく左右されるので、数億円単位のスポンサー料を得る選手はごく一部です。
ほとんどのプロテニス選手はスポンサー契約をしていても遠征費やサプリメント、テニス用具などの提供程度がほとんどです。あくまでもテニス選手の収入は賞金がメインとなります。
他のプロスポーツと比較。
他のプロスポーツ選手の平均的な稼ぎはどのくらいになるのでしょうか。野球やサッカーなど人気スポーツを調べたところ平均年収は以下のような感じでした。
プロ野球選手:約4000万円
プロゴルファー:約3000万円
Jリーガー:約2000万円
大相撲力士:約1600万円
団体競技の野球やサッカーは最低年棒が保証されているので、同じ個人競技で賞金が収入のメインとなるゴルフと比較するとプロテニス選手の苦労が分かります。
ゴルフの2019年賞金ランキング100位の獲得賞金を調べると、約475万円でした。一方、テニスで国内ランク100位の選手を調べると、戦績からも賞金は100万円以下であることが分かります。スポンサー支援が何もなければ間違いなく赤字のはずです。
ジュニアで実績を残すのがプロテニス選手への近道!
テニスの国内ツアーを現地で観戦したことがある人は分かるかもしれませんが、入場料などもなく、大会の収益増も期待できないため、国内で活動するプロ選手の収入が劇的に上がることは期待できません。
もしもプロテニス選手として本気で身を立てたいと考えるのであれば、学生のうちにどれだけ大きな戦績を残せるかが重要になります。
戦績がないとスポンサーを見つけることは難しく、スポンサーが見つからなければ個人的な金銭負担が大きくなり、たとえプロになったとしても活動期間や活動範囲に大きな制限が出るはずです。
新しいプロ選手の活動スタイルが生まれる可能性も!
テニスが強くて賞金で稼ぐのが一般的なプロテニス選手のイメージですが、エンターテイメントという観点から考えると、youtube配信など試合以外の個人活動を通してファンを楽しませて収益を得るのもプロと呼んで良いはずです。
企業からすればプロとして賞金を稼げなくとも、多くのファンを個人的に持つ選手であればイベントの協賛などこれまでと違った形で選手にお金を払う価値はあるはずです。
新たなスタイルで活動していくプロテニス選手が今後登場し、日本テニス界を大きく変える可能性もあります。日本のプロテニス界の今後の変化にも注目してみてください。
- 投稿者プロフィール
- 阿部亮平
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