男子テニスでは錦織圭がテニスツアーで活躍するようになってから現在まで常に世界ランキングトップの座を守り続けている一部の選手たちがいます。
今回はそのトップ選手の凄さを世界ランキングを決めるポイントという観点から考察していきたいと思います。
世界ランキングの決まり方!
テニスの中継を見ていると分かると思いますが、ほぼ間違いなく選手の世界ランキングが紹介されます。テニスの世界ランキングは過去1年間の成績を基に決定されているため、その時点での選手の実力をほぼ正確に反映していると考えられています。
ランキングが決定する仕組みは単純な試合勝利数ではなく、どのような大会で上位に進出したかが重要になります。
世界各地で開催される大会にはそれぞれグレードが定められています。四大大会をピラミッドの頂上として下記の図のように大会ごとに格付けがされ、グレードの高い大会で上位に勝ち上がればより多くのランキングポイントが付与される仕組みとなっています。
2010年代~現在までの男子テニス界では特定の選手がこの世界ランキングの上位の座を常に守ってきました。それがBIG4と呼ばれる4人です。
BIG4とは?
BIG4とはR.フェデラー、N.ジョコビッチ、R.ナダル、A.マレーの4人のことを指します。この4人はみな世界ランキング1位を経験しており、怪我などの欠場を除いて常に世界ランキングの5位以内をキープするなど、長期間に渡り安定した高いパフォーマンスを発揮してきたため、テニスファンの間でBIG4と呼ばれるようになりました。
彼らの強さを分かりやすく説明するために、過去10年の四大大会優勝者を調べたところ、過去10年全40大会でジョコビッチは15回、ナダルは13回、フェデラーは5回、マレーは3回とBIG4だけで合計36回もの優勝回数となり、全体の9割をも占めていることが分かりました。
では残りの4回は誰が優勝しているのかというと、ワウリンカが3回、チリッチが1回となっています。ワウリンカは優勝回数から考えるとBIG4に加わってもおかしくはないのですが、世界ランク1位の経験はなく、BIG4に比べると安定感に少し欠ける部分があったので、テニスファンの間では一つ評価を下げられているのでしょう。
ちなみに、チリッチが全米OPで優勝した際の対戦相手は錦織圭だったので、日本のテニスファンとしては今更ながらあの時に優勝していればと多くの人が思っているのではないでしょうか。
2010年代の優勝回数だけを見ると、フェデラーの優勝が少ないと感じる人もいるはずです。しかし下記の写真を見れば分かるように2010年から更に5年遡ると、フェデラーが一人で全体の約半分の大会で優勝を積み重ねており、圧倒的な結果を残していたのがよく分かります。
ちなみにA.マレーに関しては昨年から股関節の怪我により、長期のリハビリを余儀なくされ、現在は現役を続けられるかどうかという状態のため、これより先についてはジョコビッチ、フェデラー、ナダルの3人をメインにBIG3として考察していきます。
年間の試合数と勝率を比較。
では世界ランキングをより深堀して、BIG3の凄さを考察していきます。ランキングポイントを獲得するには当然大会で上位に勝ち上がる必要があります。必然的に試合数と勝率は上がっていくことになります。
2019年のデータで調べるとR.ナダルは65試合で勝率89.2%の58勝。N.ジョコビッチは68試合で勝率約83.8%の57勝。R.フェデラーは64試合で勝率84.2%の53勝となっています。BIG3は試合数と勝率はほぼ似通った数字が出ています。
では比較対象として2019年世界ランキングを4~6位で終えた、D.ティエム、D.メドベージェフ、S.チチパスの3選手についても同様に試合数と勝率を調べていきます。
D.ティエムは68試合で勝率72%で49勝。D.メドベージェフは80試合で勝率73.7%の59勝。S.チチパスは79試合で勝率68.3%の54勝でした。
メドベージェフやチチパスは昨年のシーズンスタート時に世界ランキングがまだ低かったこともあり、グレードの低い大会にも多く参加し、試合数が増えてしまった面もあるでしょう。しかしながらBIG3と比較すると3人とも勝率が10%ほど低くなっていることが分かります。
以上のことから勝率という面だけ見ても、BIG3とその他の選手の間にはランキング以上にまだ差があることが分かります。
獲得ポイントによる考察。
では次に2019年末のランキングを基に獲得ポイントの差を比較していきます。下記の写真は2019年12月30日付のATPランキング表です。
獲得ポイントを見てみると、BIG3と呼ばれる2位のジョコビッチと3位のフェデラーの間に約2500ポイントと大きな差があることが分かります。
これは2019年の四大大会タイトルをジョコビッチとナダルの2人で2勝ずつ分け合ったことがこのポイント差につながっているので致し方ないと言えます。
逆に言えば、グランドスラムで1勝もできなかった3位のフェデラーと4位のティエムの間に約800ポイントの差があることにBIG3とその他の選手の差を感じずにはいられません。
ではこの800ポイントの差を埋めることがどれだけ大変かについて、BIG3と4~6位の選手の出場大会を基に考察していきます。
出場大会数と大会のグレード。
2019年終了時のATPランキング上位6人の大会出場数とMASTERS1000以上(ATPファイナルズを含む)の出場大会を下記のように表にまとめてみました。
上記の表を見ても分かるようにBIG3と呼ばれる3人の出場大会数が少ないことが分かります。ほぼすべてのトップ選手はグランドスラムを含めてMASTERS1000以上の大会は全てエントリーするので、MASTERS1000以上の大会出場を示すオレンジの棒は6選手とも大きな差は見られません。
出場大会数だけを見ると、BIG3に比べて4~6位の選手が少なくとも5大会以上多いことが分かります。普通に考えると、出場大会数が多い方がポイントを獲得するチャンスが増えるのでランキングも上位になる可能性が高くなるように思えます。しかしながら実際のランキングはそうはなっていません。
なぜ上位の3人よりも試合に出ているのにも関わらず獲得ポイントで大きな差がつくのか。これは各選手が出場した各大会における獲得ポイントを調べていくと説明することが出来ます。
下記に2019年の獲得ポイントの中で、ATP500以下の大会で獲得したポイントがどの程度あるのかをグラフにして可視化しました。
1位、2位のナダルとジョコビッチはランキングポイントの内、ATP500以下で獲得したポイントが10%未満であることが分かります。3位以下の選手についてはATP500以下の大会での獲得ポイントが似通った数字になりますが、4~6位の選手と3位のフェデラーを比較すると、そもそもの大会出場数が違います。
ちなみにフェデラーは出場したATP500大会は3大会で全てに優勝して1500Pを加算しているので4~6位の選手に比べて圧倒的に効率的にポイントを獲得しています。
ここまで考察してきて分かると思いますが、2019年のランキング上位のBIG3に関しては、グレードの高い大会でしっかりと上位に進出して少ない大会数で効率的にポイントを獲得していることが分かります。
ランキングでは3位と4位は一つしか変わりませんが、獲得ポイントという形で見てみると、まだまだBIG3とその他の選手の差は大きいと言わざるを得ないでしょう。
ジョコビッチ、フェデラー、ナダルの凄さ!
2020年の全豪OP決勝がジョコビッチVSティエムとなり、フルセットにもつれたこともあり、いよいよBIG3の牙城が2020年に崩れるか!?という話も出ますが、昨年のランキングポイントから考察すると、まだまだBIG3の牙城は簡単には崩せないというのが分かります。
たしかに1大会であればBIG3も早期敗退するような可能性もあります。しかしながらそれは他のトップ10選手にも言えることで、1年間というトータルで考えると多くの大会で上位進出するBIG3の安定感と勝負強さは他の選手を圧倒しています。
BIG3のプレイを目に焼き付けておきましょう。
BIG3の3選手があとどれだけ現役を続けるかは分かりませんが、下の世代の突き上げも含めてATPツアーは観戦するには魅力的な時代と言えるはずです。
現役の選手からするとBIG3の存在は悩みの種かもしれませんが、テニスファンからすると、後年になって間違いなくレジェンドとして思い出されるような選手達が鎬を削る試合をリアルタイムで観戦できるのは幸せなことです。ぜひ彼らのプレイを目に焼き付けておきましょう!
- 投稿者プロフィール
- 阿部亮平
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