テニス中継を観戦しているといろいろな数字・データが紹介されます。今回はそんなデータのなかで「エース」に注目して記事を書いてみました。
エースとは?
エースとはサーバーの打ったサービスに相手が全く触れずにポイントになったショットのことを意味します。
英語でエースと呼ぶのは日本語でいう「サービスエース」のことだけです。日本語では「リターンエース」という言葉もありますが、リターンエースは和製英語なので海外では通じません。
その他にも「エース」と勘違いしやすいのが「ウィナー」です。ストロークで相手が触れずに決まったショットを「ウィナー」と呼びます。ストロークではフォアハンドウィナー、バックハンドウィナーとして中継ではよく紹介されます。
今回の記事ではあくまでも「エース」はサービスエースと定義して話をしていきます。
サービスエースの多い選手
ATPの公式サイトより、2019年のサービスエース獲得数が多い選手を調べてみました。
1位のJ.イスナーと2位のR.オペルカは年間1000本以上のサービスエースを奪っていることがわかります。両選手とも試合数が48試合ですから1試合平均20本以上のサービスエースを獲得しています。
サービスエースだけで、単純に5ゲーム分のサービスゲームをキープしている計算になります。サービスエースは相手が触れることができなかったショットのみをカウントしているので、相手のリターンミスを考えると、かなり楽にサービスキープをしていることが想像できます。
エースの多い選手の特徴
2019年サービスエースの本数が多い上位10人の平均身長を計算すると200.2㎝でした。身長が高いほど、サービスの打点が高くなり角度もつけられるため、自然とサービスエースが増加することがわかります。
サービスエースの本数は試合数に比例するので、1試合当たりの獲得本数で調べると、2019年の1位はI.カルロビッチの平均23.69本でした。J.イスナーの平均獲得本数が21.5本ですからカルロビッチの凄さが際立ちます。
ちなみにATPの公式記録として計測された1stサーブの最速記録は2012年にJ.イスナーが計測した253㎞で、2ndサーブの最速記録は2007年にI.カルロビッチが計測した232㎞です。
エースが多い選手は選手寿命が長い?
サービスエースの獲得本数の多い選手を調べていると、ベテランと呼ばれるような年齢の高い選手が多いことに気づきました。
1試合当たり10本以上のサービスエースを奪う選手にはイスナー、ツォンガ、ワウリンカ、カルロビッチなど 35歳以上の選手が多く含まれています。
I.カルロビッチに至っては現在41歳で、500位以内の選手で最年長です。ツアーに参加する選手の平均年齢は28歳ほどですから、サービス力があれば長く現役を続けられると考えられます。
サービスエースが多いと、試合中にラリーで動き回ることも減りますから、自然と身体への負担は少なくなります。イスナーやオペルカも、カルロビッチのように40歳を超えて現役を続ける可能性は十分にあります。
エースの少ない選手の特徴
2019年の1試合当たりの獲得サービスエースが少ない選手の上位10人を調べたところ西岡良仁や錦織圭の日本人選手2人も含まれていました。
10人の1試合当たりのサービスエースの平均獲得本数は2.72本でした。ツアーの試合は3セットマッチですから、1セットにおよそ1本のサービスエースを獲得する計算です。サービスを武器にする選手と比較するとかなり少ないことがわかります。
サービスゲームキープ率は平均すると75.2%で、平均身長は178.5cmでした。サービスエースの多い上位10人とそれぞれの数字を比較すると、身長では21.7㎝、キープ率では11.58%の差がありました。
サービスエースの多い選手と少ない選手を比較すると、身長やサービスキープ率で大きな差が出ることが確認できます。試合を観れば分かりますが、彼らのテニスも全く違ったプレイスタイルとなります。
サービスエースの多い選手と少ない選手の試合
サービスエースの多い選手と少ない選手が試合をしたらどうなるのでしょうか。気になったので調べてみました。
J.イスナー VS D.シュワルツマン
2017年の試合になりますが、イスナーとシュワルツマンがパリマスターズで試合をしていました。サービスエースはイスナーの29本に対し、シュワルツマンは7本。ファイナルセットまでもつれる激戦だったようです。
シュワルツマンのエースの数は2019年の試合平均2.0本よりも多いことから、イスナーのようにサービスを武器にする選手は他の選手に比べてリターンが苦手だと想像できます。
1st、2ndセットがタイブレークになっており、イスナーが相手のサービスゲームをブレイクできていないことがなによりの証拠です。
西岡良仁 VS R.オペルカ
2020年のデルレイビーチの決勝戦では西岡良仁とR.オペルカが対戦しました。試合のスタッツを調べるとオペルカが得意のサーブで27本ものエースを奪っています。スタッツを見て、気になるのが2人の2ndサービスのポイント獲得率です。
西岡は1stサーブよりも2ndサーブのポイント獲得率が高くなっています。西岡選手が左利きを生かしたスライスサーブを打ち、長身のオペルカが打ちにくい低い打点でリターンをさせていたことが2ndサービスでの高いポイント獲得率につながったのかもしれません。
一方、オペルカの2ndサーブにおけるポイント取得率が低いのはなぜでしょうか。オペルカの2019年の2ndサーブのポイント取得率は54.7%と上位に入る数字を記録しているので、決して悪いサーブではありません。単純に西岡選手のリターン力が高いことが試合スタッツから読み取れます。
エースの多い選手と少ない選手は噛み合う?
サービスエースの多い選手と少ない選手が試合をすると接戦になる傾向があります。
2つの試合スタッツを調べただけですが、サービスが得意な選手はリターンゲームが苦手で、逆にエースが少ない選手はリターンが得意なことがわかります。極端な特徴を持つ選手同士が試合をすると、お互いが持ち味をぶつけ合うような試合展開になり、競った試合になりやすいのかもしれません。
ビックサーバーとストローカーの試合に注目!
プロテニスツアーは各選手が自分の持ち味をぶつけ合って戦いを繰り広げる場です。サービスエースの多い選手と少ない選手が試合をすると、競った展開になることも多く非常に興味深い展開の試合になります。
ツアーが再開され、エースの多い選手と少ない選手の戦う試合を観戦するチャンスがあればぜひご覧になってください。
- 投稿者プロフィール
- 阿部亮平
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