テニスは女子と男子でプレイに大きな差が生じます。テニス界は女子と男子で待遇面などに格差があるという声も一部で上がりますが、今回はそんな女子テニスと男子テニスの違いについて調べてみました。
女子と男子の体格の違い。
女子と男子では体格的な違いが生じるのは当然です。まずは女子と男子のトッププロでは身長や体重などの体格面にどの程度違いがあるのかを調べました。
身長と体重。
世界ランカー全選手のデータをまとめるのは大変なので、ATP・WTAの上位20選手のデータから女子と男子それぞれの平均身長と平均体重を出しました。
WTAランキング(女子)上位20選手のデータを平均すると、身長177.45㎝、体重は67.05kgで、ATPランキング(男子)上位20選手の平均は身長187.5㎝、平均体重80.9㎏でした。
女子と男子を比較すると、身長で約10㎝、体重で約14㎏の差があることが分かりました。体格面ではやはり男子と女子で大きな差がありますが、女子のトップ選手の平均身長は予想していたよりもかなり高く驚きました。
女子選手の体重は、WTAの公式サイトに記載がなかったためWikipediaで調べた数値を使い計算しました。公式情報でないため、あくまでも参考程度に留めておいてください。
日本人女子の平均的体格は?
気になったので日本人女性の平均身長や体重も調べてみました。女子の現役テニス選手と同世代の20~29歳で、平均身長は158.7㎝、体重は52kg程と、女子テニスのトッププロと比較すると身長で約19㎝、体重で約15㎏ほど差がありました。
もちろん一般人とアスリートを比較してもあまり意味はありませんが、日本人女子がなかなか世界で活躍できない要素の一つとして体格的なハンディが挙げられるのも納得できます。
筋肉量の違い。
女子・男子を問わずテニス選手の筋肉量を詳しく調べることができません。そこで体脂肪率を基に女子テニスと男子テニスの筋力差を考えていきます。
平均的な体脂肪率は男性の場合は10~19%。女性の場合は20~29%と言われています。テニス選手も含めてアスリートは一般人よりも体重が重いことがほとんどですが、これは筋肉量が多いことが原因で体脂肪率が高いわけではありません。
ボディビルダーであれば体脂肪率が10%以下になりますが、体つきから考えてもテニス選手の体脂肪は男女ともに一般人とそこまで差がないはずです。単純に考えて体脂肪率が同じでも体重が重い人の方が筋肉量は多くなり、より大きな力を生み出すことができます。
男子と女子では体重差による筋肉量に差が出ます。そして、性差による体脂肪率の差が生じるため、ここでも筋肉量に差が出てしまいます。そのため、男子と女子でほぼ同じ体格の選手を比較してもボールの威力に差が出るのは当然です。
ちなみにトップ20の選手だと男子のD.ゴフィンと女子のJ.コンタが共に180㎝70㎏と同じ体格だったので2人のプレイを見比べると男女の筋肉量の違いを実感できます。
試合データからみる男女差。
男女の身体的な差によってテニスのパフォーマンスにどのような差が出るのでしょうか。公表されている試合スタッツなどから、女子テニスと男子テニスの違いを考察していきます。
平均試合時間。
テニスの試合時間は対戦相手や試合形式によって変化します。四大大会の試合形式は女子が3セットマッチ、男子が5セットマッチと違う形式になるため、試合時間は男子の方が長くなります。四大大会以外では基本的に男女ともに3セットマッチなので試合時間に大きな差は生じません。
女子と男子で体格差があっても、試合自体は男女で分かれていますから試合時間に影響はありません。
女子テニスと男子テニスのボールスピードの差。
女子と男子でプレイ中のボールスピードにどの程度の差が出るのか調べてみました。
分かりやすいデータとして、サービス速度があるので、開催中の2020全仏オープンの4回戦のデータから考察します。男女それぞれ4回戦全8試合において各選手が打ったサービスの最高速度と1stサーブ、2ndサーブの平均速度を調べました。
男子選手のサービスの最高速度の平均が199.5km/h、1stサーブの平均速度が178.1㎞/h、2ndサーブの平均速度が141.8km/hでした。一方、女子選手のサービス最高速度の平均は166.4km/h、1stサーブの平均速度が148.6km/h、2ndサーブの平均速度が123.3㎞/hでした。
男子と女子の差は1stサーブで約30km/h、2ndサーブで約18㎞/hの差と、かなり大きな差があることが分かります。ボールスピードでは男子テニスと女子テニスの間に大きな差があることが分かります。
女子テニスと男子テニスのレベル差はどのくらい?
「女子世界1位の選手は男子プロと真剣勝負したら勝つことができるのか?」、テニス観戦が好きな人であれば一度は考えたことがあるかもしれません。妄想にはなりますが少し考えてみます。
ボールスピードだけで考えれば、女子でトップクラスの選手は男子でボールスピードの遅い選手と同等のスピードボールを打つことができます。先ほど調べたサーブのデータでも女子でトップレベルのサーブを打つ選手はサーブを武器としない男子選手と同等の数字を記録していることが分かります。
女子トップレベルのビッグサーバーは1stサーブで170㎞/h台、2ndでは135km/h前後のサービスを打ちます。ボールスピードだけで言えば男子選手と遜色ない数字で、十分に男子相手にも戦えそうです。
しかしながら、体格差から生じる筋力差によってコートカバーリングやボール回転量は男子選手に圧倒的に分があるので、女子テニスでトップレベルの選手でもツアーレベルの男子選手に勝つのは現実的に考えて難しいはずです。
男子の下部ツアーで1~2回戦レベルの選手が相手であれば、女子テニスのトップ選手なら勝つことができるかもしれません。
女子テニスと男子テニスの賞金額。
同じプロテニスでも女子テニスと男子テニスでは待遇面に差があると長い間指摘されてきました。男女の待遇差で真っ先に挙げられるのが賞金額の差です。男女の賞金額の差について調べてみました。
四大大会では男女ともに同額の賞金が設定されていますが、同額になったのは2007年からとごく最近のことです。
ツアー大会の賞金差。
ツアー大会の場合は開催大会に大会グレードによって賞金額に差が出ますが、男女同時開催の大会になると話が変わってきます。2020年イタリア国際の賞金額を比較してみます。
優勝者と準優勝者の賞金は男女同額ですが、それ以下のラウンドになると徐々に賞金額の差が拡大していることが分かります。Round16での敗退時に男女差が最も大きくなり、女子の19,355€に対して男子は61,000€と3倍近い差が生じます。
年間の獲得賞金に差は出るのか?
2020年スタート時にグランドスラムでシード獲得目安である32位の男女選手で、獲得賞金に差が出るのかを2019年データを基に調べました。女子はH.スーウェイで約100万ドル。男子はT.フリッツで約115万ドルと15万ドルほどの開きがありました。
賞金が同額の四大大会の戦績で比較したところ、スーウェイは3R,2R,3R,2Rで、フリッツは3R,2R,2R,1Rでした。賞金が同額の四大大会だけで比較すると約12万ドルほどスーウェイの方が高い賞金を獲得しています。
複数の選手を比較してみないことには賞金額の格差については断言できませんが、女子選手がしばしば男女の待遇差について言及するのも一理あるなという印象を受けます。
女子と男子のテニスは違いは大きいがどちらもプロテニス。
体格やプレイレベル、賞金額といろいろ調べてみましたが、男子と女子で差が出るのは当然です。同じテニスでも性別が違えば異なる競技に感じるほどプレイは違うかもしれませんが、どちらも紛れもないプロとしてテニスファンに観る楽しみを提供してくれています。
賞金額についてはプロツアーがATPとWTAに分かれて運営されている点にも原因がありそうですが、原因は何であれ、ファンとしては男女を問わずプロ選手たちがその努力に見合った報酬や待遇を受けられるようになることを願うばかりです。
- 投稿者プロフィール
- 阿部亮平
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