テニス馬鹿なの?君は パート3【ウサギとテニスを愛する男編】

テニス馬鹿3

我がサークルのテニス馬鹿と言える3人目の人物がいる。年齢は30歳前半でサークルメンバーの中で一番若い。彼のことをHさんと呼ぶことにする。

テニス馬鹿との出会い

Hさんとの出会いは、不気味だった。

4年前の夕方、サークルでいつものようにテニスを楽しんでいると、我々のプレーを覗き込む不審な男性の存在に気づいた。シルバーのスポーツタイプのサングラスをしている。我々を覗き込んだり、引き返したり、再び覗き込んだり、引き返したりして、挙句の果てにサングラスを外し、眉間に皺をよせながら見てくる。

筆者は、ひょっとして、刑事か探偵?と思ってしまった。サークルのメンバーの中の誰かが犯罪に関わったり、不倫して探偵から素行調査をされたりしているのではないかと勘繰ってしまったのだ。メンバーには犯罪者のような顔をしている者は数名いるが、皆心は善良だ。だから警察ではない。不倫調査の可能性はどうだ? 皆結婚はしているが奥さん以外の女性にもてるタイプはいないと断言できる。メンバーのルックスの悪さには自信がある。ということは不倫調査も違う。などと思いを巡らせていた。そうこうしている内に、メンバーのKさんがやや遅れてやって来た。そして、その不審な男性とKさんが談笑し始めたのだ。なんだあ、知り合いなのかと少し残念に思いながらも安心した。

KさんはHさんとテニススクールで出会い、我がサークルにスカウトした。そのことを知らなかった筆者が余計な想像をしてしまったというわけだ。

テニス馬鹿の車の色

Hさんは赤の車に乗っている。しかし、スポーツカーではない。車種はトヨタのアクア。1リットルで、どこまでも走ると豪語する(30㎞位か?まるでスーパーカブ)ファミリーカーだ。真っ赤な車体はよく目立つ。だから、テニスコートに彼がいるかどうかがすぐにわかる。彼が車を購入するとき、20代最後の年ということで派手な色にするには今しかないと決断し、赤色のボディーカラーにしたそうだ。

赤色の好きな人の性格をインターネットで調べてみた。「生きようとするエネルギーが強い人である。あらゆることに欲張り屋さんなので、すべてが人並み以上になる」

(参照;色で性格判断)

ということだった。なるほど、いつもエネルギーが余っているように見えるのはこのためか。人並み以上に練習し、人並み以上にボールがラインオーバーするのはこの赤色好きのせいだ。本人には全く罪はない

テニス馬鹿のプレースタイル

このお馬鹿さんは、サーブがある意味武器でもあり、ウイークポイントでもある。ダブルスでもシングルスでもセンター付近でサーブを打つ。そして、T辺り(テニス経験者ならわかるはず)に打つことが大好きだ。(ワイドには打てないのかもしれない)

筆者がアドコート側でリターンする際、彼のサーブした球がT付近で高く跳ねるため、バックハンドのスライスで返球することになる。ダブルハンドなら叩き込めるのだろうが、片手バックハンドの高い打点でハードヒットする技術がない筆者にとってスライスで返球することが精いっぱいだ。しかし、もっとやっかいなのはセカンドサーブの方だ。ファーストサーブよりスピードがある。そう、彼はダブルファーストサーブの持ち主だ。彼の頭には、セカンドサーブを安全に手堅く入れようとする気持ちは全くない。それを知っているからこそリターンする側はファーストよりもセカンドサーブを警戒する。また、彼は力加減することができない。その証拠に、ドロップショットやタッチボレーなどのプレーを見たことがない。全てがフルスイングなのだ。やはり赤色が好きなだけのことはある。生きるエネルギーが異常に強いためスイングの微調整ができず、常に全力なのである。

テニス馬鹿はウサギがお好き

テニス馬鹿はウサギを一羽飼っている。一人暮らしで、ふと寂しさを感じた時にそばに誰かいて欲しいと思ったらしい。普通、独身男性なら妻をめとらねばと考えるものだが、彼はペットショップに行った。そして、檻に入った一羽のウサギに一目ぼれしてしまった。そのウサギを購入し、家の中で放し飼いにして育てているという。真夏は、エアコンの冷房を、冬場であれば暖房をつけている。結局、一年中エアコン稼働させている。彼の自宅から職場まで結構な距離がある。そのことを知った筆者が職場に近い場所に引っ越すように促したところ無理だと答えた。いろいろ物件をあたったが、今のアパートしかウサギを飼うことを許可してくれなかったそうだ。ウサギのためには労をおしまないのである。このことを聞いて、彼の結婚は当分ないと思ってしまった。

 筆者は年の2,3度自宅の庭でバーベキューをする。その際、お客を30名程度招く。Hさんも来たことがある。その時は独身女性はいなかったからか、彼にとってよい出会いはなかった。その次のバーベキューでは独身女性が6人来た。またその次のバーベキューでは独身女性が9人も来た。筆者は、気をきかせ(おせっかいかもしれないが)Hさんを強引に誘ったのだが、2回とも用があるといって断られた。独身女性に出会える千歳一隅のチャンスだったのに残念なことである。もしかしたら、独身女性より独身男性を招いた方がよいのかもしれない。現代は、男性同士でも女性同士でもジェンダー同士でも、だれと結婚してもいい時代である。よし、次の時は、独身男性中心のバーベキュー大会にしようと思う。多分飼っているウサギもオスだろう。

テニス馬鹿とのペア

筆者は、来月の試合にHさんとペアを組んで試合に出場することになった。お互いのプレースタイルが似ているので、調子に乗るとまあまあ強いと思う。しかし、互いのサーブの確率が悪ければ、調子づくことができずに自滅していくことだろう。とにかく2人ともサーブの確率を上げることが必要だ。

先日、テニススクールでペア練習を兼ねた試合をしたのだが、どうも二人のコンビネーションが悪い。Hさんは、守備範囲がとても広く、その上とても優しいので、筆者の打つべきボールまでさばいてくれる。状況によっては大変助かるのだが、そんなときはオープンスペースができてしまい、相手に打ち込まれて失点する。このような場面が何度もあった。本番では、その優しさを封印してもらうようにお願いしたい。とにかく、力加減の微調整が苦手な2人が組むのだから、テンポよくリズミカルに展開し、勢いを武器に戦いたい。そのためには、セカンドサーブをゆっくりと確実に入れなければならい。でもこれが二人とも一番苦手なのだ。

上半身だけで強烈なスピンボールを打つテニス馬鹿

テニス馬鹿の趣味

Hさんは、週に4日テニスをしている。多い時は、朝と夕方にプレーする。その時は、30万円の高級自転車で来る。朝練習して、夕方まで時間があるのでカラオケに行って時間をつぶす。流石にウサギは連れて行かれないので、単独プレーだ。カラオケもたくさんある趣味の中の一つらしい。歌声を聞いたことはないが、きっと微調整ができない歌唱法のはずだ。他にも、サイクリング、ゲーム、漫画、水族館巡りなどの趣味がある。最近こともあろうが、料理も始めてしまった。これは、まずい。ますますウサギとの人生が尊いものになってしまうではないか。筆者のやるべきことは、ウサギに代わる人生のペアを見つけることだ。おっとその前に、恋愛対象は、男性か女性、どっちでも構わないのかを訊いてみなければならない。次の試合中にさりげなく尋ねてみよう。

生きる力があり余るHさんだが、非常に優しい面がある。筆者が、重いボールかごや荷物をコートに運ぶ姿を見ると一目散に走って来て、荷物を持ってくれる。また、ダブルスで組んだペアが何度ミスっても、「どんまい。どんまい。」「長い人生そんな日もありますよ。」と励ましてくれる。こんな優しいお馬鹿さんなのだから、私がするべきことは、ウサギをペットとした明るい家族をつくらせることだ。

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