2019年ウィンブルドンにて2大会連続のベスト8を達成し、 グランドスラム5大会連続ベスト8以上という快挙を成し遂げた錦織圭。彼のキャリアにおいて最大のターニングポイントとなるツアーといえば、やはり2014年の全米オープンでしょう。
自身の名前を国内のみならず全世界に知らしめた、歴史的瞬間の年を改めて振り返ってみましょう。
ウィンブルドンの雪辱を!しかし…
ウィンブルドンでは自身初となる3回戦進出
第10シードとして望んだウィンブルドン2014では3回戦でシモーネ・ボレリと対戦。第5セットをゲームカウント3-3としたところで日没順延となり、 翌週の月曜日に再開された試合で第10ゲームをブレークして自身初となるウィンブルドンでの3回戦突破を決めました。
しかし4回戦では第8シードのミロシュ・ラオニッチに 6-4, 1-6, 6-7, 3-6で敗れ、 松岡修造以来19年ぶりのベスト8とはなりませんでした。
全米オープンへ向けて前哨戦
次に錦織が望んだのは全米オープンの前哨戦となるシティ・オープンでした。第4シードで出場した錦織は大会初のベスト4をかけた準々決勝で第6シードで世界ランク14位のリシャール・ガスケと対戦し、 1-6, 4-6で惜しくも敗れます。
しかしこのとき、敗戦よりも深刻なものを右足に抱えてしまったのです。
想像より深刻だった右足のケガ
シティ・オープン終了後、右足親指の故障のため同じく全米前哨戦のロジャーズ・カップとウエスタン・アンド・サザン・オープンを欠場して親指の嚢胞手術をし治療に専念しました。
毎年、なにかとケガを抱えることで有名になっていた錦織。「手術もしているし、今年の全米オープンは絶望的だな」と誰もが思っていました。
おそらく、錦織圭本人とそのサポーターを除いては。
ケガに不安を残しつつ、全米オープン開幕!
1回戦 VS.ウェイン・オデスニク
なんとかケガの治療が間に合った錦織が最初に対戦した相手は、シングルス自己最高ランク77位のウェイン・オデスニクでした。オデスニクに6-2, 6-4, 6-2のストレートで勝利します。
ちなみにオデスニクはこの年の12月にドーピング検査でステロイド系が検出。歴代最長となる15年という出場停止処分を言い渡され、2015年に現役を引退しています。
2回戦 VS.パブロ・アンドゥハール
2回戦の相手はスペイン出身のパブロ・アンドゥハール、シングルス自己最高世界ランクは32位(2015年)でした。
この試合も6-4, 6-1(第3セットは相手が棄権)で勝利した錦織は4大大会通算33勝となり、佐藤次郎が持っていた日本人男子記録を更新しました。
3回戦 VS.レオナルド・マイエル
3回戦は第23シードのレオナルド・マイエルに6-4, 6-2, 6-3でストレート勝ちし、初出場であった2008年大会以来6年ぶり2度目の全米オープンベスト16進出が決定しました。
3戦連続のストレート勝ちで、徐々に世間の注目も高まってきます。 しかし錦織の快進撃はまだ始まったばかりだったことを当時の人々は知る由もありませんでした。
4回戦 VS.ミロシュ・ラオニッチ
4回戦では第5シードのミロシュ・ラオニッチ を4-6, 7-6(4), 6-7(6), 7-5, 6-4のフルセットの末に下し、全米オープンでは自身初、日本人男子選手では1992年の清水善造以来92年ぶりのベスト8進出を決めました。
ナイトセッションで行われたこの試合の試合時間は4時間19分に渡り、終了時刻は全米オープン史上最も遅い午前2時26分でした。
4時間を越える試合の間、集中力を切らさず、また痛恨のミスをしてしまっても気持ちを切り替えられるメンタルには脱帽せざるを得ません。
準々決勝 VS.スタン・ワウリンカ
準々決勝も試合時間4時間15分の2試合連続フルセットの末に第3シードのスタン・ワウリンカを3-6, 7-5, 7-6(7), 6-7(5), 6-4で下し、4大大会では自身初、日本人男子選手としては1918年の熊谷一弥以来96年ぶり、4大大会でも1993年ウィンブルドンの佐藤次郎以来81年ぶりとなるベスト4を決めました。
日本人選手のとんでもない快挙に大騒ぎの日本でしたが、同時に不安も覚えます。それは直前のケガのこと、経験のない4時間を越える試合を連続でこなしてしまったのだから、もう錦織の身体はぼろぼろなのではないか…
しかも準決勝の相手は世界最強の男、ノバク・ジョコビッチ。しかしロジャー・フェデラーに勝利したこともある錦織なら、戦えるのではないか。
多くのテニスファンの間で議論が止みませんでした。
準決勝 VS.ノバク・ジョコビッチ
そしてついにむかえた準決勝。世界最強の男:ノバク・ジョコビッチを相手に6-4, 1-6, 7-6(4), 6-3で勝利し、シングルスでは男女通じて日本人初、男子に限ればアジア出身選手初のグランドスラム決勝進出を果たします。
試合後のジョコビッチのインタビューで、「もはや勝てない相手はいないだろう。」と太鼓判をもらうほどに、錦織は強くなっていました。
日本人がグランドスラム決勝の舞台に立つ歴史的瞬間をテレビで見ようと思った多くの日本人がまさかの事態に遭遇するわけですが、それはこの記事の後半で…
決勝 VS.マリン・チリッチ
いよいよむかえた全米オープン決勝。対戦相手はここまで5勝2敗と相性のいいマリン・チリッチ。有利な対戦相手も相まって、誰もが優勝を願い、また確信していました。
しかし結果は3-6, 3-6, 3-6、ストレートの敗退でした。
後のインタビューで錦織はこのように答えています。
「決勝の相手が、勝ち越しているチリッチに決まり、逆に緊張してしまった。ここまで試合の最中に硬くなったのは初めての事で、この為なかなか感覚が掴めず、動きが悪かった。動きの悪さが原因で、チリッチの速いゲーム展開について行くことが難しかった。」
有利な相手だったことが裏目に出た結果になりましたが、格上相手に臆せず勝利したチリッチのメンタルの強さも賞賛に値するものでしょう。
決勝進出の裏で日本はパニックに!?
まさか、決勝がテレビで見れない!
日本人初のグランドスラム決勝進出!これはぜひとも生中継で応援したい!
しかしこのとき、国内の独占放映権は有料放送の「WOWOW」が持っており、NHKや民放で生中継を見ることはできませんでした。
怒り狂った国民がNHKにやつあたりのクレームを入れるなど放送局は一時大混乱に。大急ぎでWOWOWに加入する人が増え、結果的にWOWOWの一人勝ちになりました。
松岡修造氏の公式HPがえらいことに
「修造チャレンジ」に2度参加したことがあることでも有名な錦織圭ですが、なぜか松岡修造氏の公式HPにアクセスが集中し、サーバーがパンク状態になりました。
松岡修造氏の熱く魂のこもったコメントを見たかったのでしょうか。真意は謎のままですが、松岡節の後押しが欲しくなるくらい日本人サポーターも緊張と不安を抱えていたということではないでしょうか。
ケガにも負けない屈強なメンタル
この快進撃から我々が学ぶべき点はやはり「周囲の評判を気にせず己だけを信じ、全力を尽くすこと」でしょう。
ケガで手術、誰よりも不安を抱えていたはずの錦織本人が見せてくれた屈強なメンタルと圧倒的な格上にも怖じけづかない勇気は、世界中に活力と感動を与えてくれました。
これから錦織圭が世界の階段をどこまで登っていくのか、到底想像ができるものではありません。
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